・<国民投票の背景>
イタリアでは後述のとおり、電磁波公害が一般に認知され、予防原則に基づいた法政策が確立されつつあるが、送電線近くの住民に対する健康被害やその懸念が広がっていた。
(イタリアでは、約30万人の住民が、高圧送電線の影響下に住んでいるといわれる。)
また、1933年の法律制定当時電力事業は国営事業であったが、ENEL(イタリア電力公社)が1999年の電力自由化に関するEU指令に対応する形で2000年に民営化され、電力事業は原則自由化されたので、国営事業時代の法律をそのまま存続させるのは、自由公平な競争という市場ルールから見て、おかしいのではないかとの指摘がなされていた。
加えて、自治体の都市計画上の権限も無視しているので地方自治の障害となる。
<結果>
投票者(Votanti) 25.7%、賛成(Si) 85.9%、反対(No)14.1%。
投票者が有権者の半数に満たなかったので、強制的な送電線の廃止に賛成する人が多く投票したにもかかわらず、国民投票は無効となった。
((1)の方も同様に無効となった。)
その理由としては、次のような要因が拳げられている;
●イタリア国民の政治的無関心が懸念されているが、ここ数年の国民投票はすべて有効者数にとどかず、国民投票制度の是非も問われつつある。
●猛暑とバカンスの季節が重なり、有権者が投票に行きたがらなかった。
●マスコミの報道も、より国民的関心の高い(1)(労働者憲章第18条)の方に集中した。
●電力を隣国フランスなどから輸入しているので、送電線は不可欠という説もある
(現在は、猛暑による電力消費の増大から電力危機(停電等)が報道されている。)