・●ブラック・ボックスのデータ
車の操作記録を供給するブラックボックスのデータリコーダーもこれ自体、車の電子回路から完全に独立していない。
コストの関係でブラックボックスはそれ自体のセンサーを使うのではなく、車の電気を使ってシグナルを記録する。
そこで、たとえば、車の回路が干渉を受けて「運転手がエンジンバルブの全開を指令した」と誤認した場合、データリコーダーでは「運転手がアクセルペダルを踏んだ」と記録される。但しガスペダルの単独のセンサーがあれば、結果はまた異なる。
最新式アクセスペダルはそれ自体が複雑な電気機械で、非常に電気干渉を受けやすく、その結果、エンジンの電気コントロールシステムに誤った出力を与えやすい。
たとえブラックボックスのデータレコーダーが独立センサーを使ってアクセルペダルの位置を示したとしても、エンジンコントロールシステムにシグナルを送るのと同じ技術を使っていたら、それは同じように干渉をうけ、同様の間違った出力を与える可能性もある。
●代理機能
電子回路の信頼性を高める一般的な方法は「代理機能」を使うことである。しかし、もし代理機能や重複機能機器や回路が同じ技術を使うと、それらはおそらく同じように電磁波干渉を受けるだろう。それは代替機能技術の効果をそこなう。この理由で、電磁波干渉は安全工学では「共通原因」問題として知られる。
●証拠の不足では何も証明されない。
自動車メーカーの常套句はこうである。
「私たちは電磁波干渉が急加速の原因となる証拠は何も見つけることができない。だから、電磁波干渉はその原因ではないにちがいない」・・・過去30年にわたって、このような論拠に乏しい言い訳をすべての自動車会社が使って来た。そこそこ有能なEMC設計エンジニアなら当然、電磁波干渉はその軌跡を残さないことを知っている。
そこには自動車メーカーで働いているエンジニアたちも含まれる。
この破綻した理論がいまだに使われているのは、これが論理的に正しくないことに気付かない人々たちには説得力があるように聞こえるからだ。
だから政治家や官僚はこの言い方を好む。
これについては、私が書いた記事『証明の欠如は欠如の証明ではない』(EMCジャーナル、78号、2008年9月)を読んでほしい。