・●電磁波干渉によるエラーはあとに証拠を残さない。
電磁波干渉による電子回路の誤作動は起こりえる。
しかし、問題はそれが起きたとしても、その証拠を事故後に調べることが極めて難しいことである。
落雷などの強い電磁波は電子回路に損傷を起こすことがあるし、静電気放出などによっても損傷の可能性はある。
しかし、ほとんどのタイプの電磁波干渉は電磁波エネルギーが小さいので、電子回路のシグナルにゆがみや混乱をきたしたり、その結果、ハードウェアやソフトウェアの操作にエラーを起こすことはあても、電子回路そのものに損傷を与えることはない。
エラーや誤作動を起こした電子回路は、電磁波干渉が解消されればほとんど回復する。
電子的誤作動状態が消えなければ、事故後にイグニッション(点火装置)のスイッチを切らない限り原因究明は可能であるが、事故を起こした時、人が最初にすることはイグニッションを止めることである。
すると証拠はただちに消えてしまう。警察や救急隊は事故車からの発火を防ぐためにバッテリーを断絶する。同時に誤動作の証拠はすべて消える。
●原因となりうるラッチ・アップ
より深刻な電子機器の問題にラッチ・アップ(latch-up)がある。
これは異常電流が内部で流れ続ける状態を言う。ラッチアップは集積回路(IC)の出入力ピンに1ボルト以上の直流電流が流れることで起こりえる。
たとえば、ノイズ電流のカップリング、スパイク、静電気などが原因となる可能性がある。
集積回路が熱くなったり、イオン放射をあびた時、ラッチアップしやすい。自動車のマイクロプロセッサーのピンはスパイクや静電気、特にイグニッションシステムからのスパイクに常時曝されている。
●考えられる誤作動の種類
電子制御式エンジンバルブ(スロットル:抑圧弁)の場合、ハードウェアやファームウェアの誤作動はバルブの制御不能状況を招く可能性がある。
オーストラリアでは、オートクルーズ(アクセルペダルを踏み続けることなくセッティングしたスピードを維持できる機能)のフォード車が80kphにセッティングされたままスピード・セッティングを変えることもできないという事件が起こった。エンジンバ
ルブが開きっぱなしになる状況は非常に危険で、自動車の傷害・死亡事故の原因のうちでも特に多い。
このように、瞬間的な電気的誤作動によって重大な事故が起こる可能性もあるが、誤作動が自動的に回復するため証拠を残さない。