・ 慢性の痛み(慢性痛)があると、脊髄後角を介して、交感神経が緊張し、血管が収縮し、筋肉が攣縮する。
そうすると、局所の血流が低下し、乏血(虚血)状態になり、組織の酸素が不足するので、局所では、PGE2なが産生され、局所の血流が増加する。
PGE2は、発痛物質なので、痛みが増強する。
このように、慢性痛により、局所の血流が低下して、PGE2が産生され、痛みが増強している場合は、温浴などで、局所を暖め、血流(血行)を良くしてやると、PGE2の産生が低下し、痛みが改善する。
急性の痛み(急性痛)の場合、侵害受容器とC線維を介して、神経ペプチドが遊離され、NK-1受容体に作用し、PGE2を遊離させたりして、痛みが増強する。
このように、急性痛では、局所を暖めて、血行を良くしてやると、神経ペプチドやPGE2の遊離・産生が促進され、痛みが増強されるおそれがある。
従って、急性痛は、冷やし、慢性痛は、暖めると良い場合が、多い。
なお、急性痛でも、感染症による炎症での痛みの際には、局所周囲の血管(細動脈)は、収縮して、全身や周囲に、病原体が、広がらないようにしているので、暖めると、却って、病原体や炎症を、全身に広めてしまうおそれがある。
・ なお、ストレスは、脳からインパルスを脊髄後角に伝導し、交感神経節を介して(緊張させて)、筋肉や血管を収縮させ、局所を乏血状態にし、組織の酸素を欠乏させ、発痛物質を産生させ、侵害受容器(知覚神経)を刺激し、痛みの情報を、脊髄を介して脳に伝導させ、痛みとして知覚される。
この痛みが、ストレスとなって、脊髄から伝導され、痛みの悪循環が起こる。
慢性痛では、冷えると、発痛物質が蓄積して、傷みが増悪する。軽い運動をして、血行を良くすると、発痛物質が除去されて減少し、痛みが軽減する。
しかし、急性痛では、運動をすると、組織の酸素需要量が増加し、組織傷害が増悪し、発痛物質が増加し、痛みが増強するおそれがある。