・シンポジウム4
食物アレルギーの患者に優しい医療
司会者:海老澤元宏1), 向山徳子2)(国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部1), 同愛記念病院小児科2))
S4-4.学校での食物アレルギーへの対応(学校生活管理指導表)について
海老澤元宏
国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部
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アレルギー疾患を持つ児童・生徒は急増しており,それらの生徒が学校生活を安全に送るためには様々な配慮が必要となる.
それらの児童・生徒が学校生活上配慮を必要とする場合に医療機関と学校の間の情報伝達を行うツールとして文部科学省の答申を受けて日本学校保健会において専門医,学校関係者が討議し作成したのが“学校生活管理表(アレルギー疾患用)”(以下管理表)である.
管理表は日本学校保健会のホームページ(http://www.hokenkai.or.jp/)からダウンロードできるようになっており,学校関係者が管理表に対応するためにアレルギー疾患への正しい知識を持ってもらうように作成したのがすでに全国の公立の小・中学校に2冊ずつ配布されている“学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン”である.食物アレルギーを持つ児童・生徒にとっては学校生活上最も配慮が必要となるのは給食であり,食材を取り扱う調理実習や体験学習などでも健康被害が発生し得るので配慮が必要である.
これらのことに関していままでは食物アレルギーを持つ児童・生徒が在校していないという前提で進められてきたところに問題があり,近年の食物アレルギーの増加という事態を全く想定していなかったのである.
アナフィラキシーの原因で最も多いのは食物アレルギーであるが,運動との組み合わせや運動単独などでも発生するので注意が必要である.
アナフィラキシーの補助治療薬(エピペン)や喘息の発作治療薬の使用状況の把握のためにはそれらの管理なども学校側に求められる.
宿泊を伴う学校行事に食物アレルギーが原因で参加できていない児童や生徒がいるのも事実であり,宿泊施設の調理担当者にどのような注意をしてもらうのかを学校側から伝えて安全性を確保した上で連れて行けるようになってもらいたい.
児童・生徒達の学校生活に関与するすべての教員は正しいアレルギー疾患の理解と対応が必要である.
管理表が全国で用いられてどこでもアレルギー疾患への対応が同じようにしてもらえるという時代が来るためには各地域の教育委員会,学校と医師会,学校医の連携が必須である.
第21回日本アレルギー学会春季臨床大会 2009年6月開催