・シンポジウム5
食物アレルギー研究の最近の進歩
司会者:海老澤元宏1), 眞弓光文2)(国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部1), 福井大学医学部小児科2))
S5-5.食物アレルギーの寛容誘導療法
柘植郁哉1), 中島陽一1), 小松原亮2), 平田典子2), 湯川牧子1), 各務美智子2), 近藤康人1), 山田一恵3), 木村 守4), 宇理須厚雄2)
藤田保健衛生大学医学部小児科1), 藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院小児科2), 山田医院3), キューピー株式会社4)
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食物アレルギーの有効な根治療法は確立しておらず,現状では原因食物の除去をしつつアウトグローを待つことが治療の基本ということになる.
しかし,食物アレルゲンによっては,特に年長児期以降の発症などアウトグローが見られないケースにも遭遇するし,また,除去食療法は患者や保護者への負担が大きく,必要最少限とすべき治療法であり,根治療法の開発が望まれところである.
我々は,鶏卵アレルギーをモデルに,低アレルゲン化食品を用いた食物アレルギーの免疫療法を試みて良好な結果を得ているが,これをさらに改良してより安全で有効な寛解誘導療法を開発することを目的に,経口免疫療法により誘導される寛解のメカニズムを解析した.
アレルゲンそのものを用いた免疫療法は,副反応の頻度が高く,時に重篤になるため,我々は卵白を加熱し,さらに,加熱してもアレルゲン性を失いにくいオボムコイドは,水溶性であることを利用して除去することにより低アレルゲン化(加熱脱オボムコイド卵白クッキー)して免疫療法に用いた.
卵白負荷試験陽性の卵白アレルギー患者名32を対象として,加熱脱オボムコイドクッキーを2-4週間連日投与した.
これまでのまとめでは,凍結乾燥卵白陽性群は23例中12例(52.1%),加熱卵白陽性群は9例中5例(55.6%)で陰性化した.
免疫学的なパラメーターの検討では,卵白特異的IgEは治療前後で差が見られなかったが,寛解した患者群でのみ特異的IgG4が有意に上昇していた.
卵白アレルゲン刺激による末梢血単核球のサイトカイン産生能の検討では,経口免疫療法前後におけるIL-4,IFN-γの産生能の変化率を免疫療法後のstimulationindex(SI)と免疫療法前SIの比として算出し,非陰性群と陰性群間との間で比較したところ,IFN-γおよびIL-4の変化率はともに,非陰性化群では陰性化群と比較して有意に高値であり,経口免疫療法の成功した群では卵白抗原刺激による末梢血単核球からのサイトカイン産生は,Th2サイトカインだけではなく,Th1サイトカインの産生も抑制する機序が働いていることが示唆された.
現在,残存するオボムコイドを増加した新たな低アレルゲン化食品による寛容誘導療法を開始しており,その知見も加えて報告する.
第20回日本アレルギー学会春季臨床大会 2008年6月開催