・シンポジウム5
食物アレルギー研究の最近の進歩
司会者:海老澤元宏1), 眞弓光文2)(国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部1), 福井大学医学部小児科2))
S5-3.食物アレルギーの診断法の進歩
今井孝成1), 海老澤元宏2)
国立病院機構相模原病院小児科1), 国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー疾患研究部2)
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食物アレルギーの診断には負荷試験がGold Standardであることは周知であるが,実際の試験は煩雑であり,何よりもアナフィラキシー症状を惹起するリスクを伴う.
このため,可能な限り負荷試験を行わず食物アレルギーが診断できること,また負荷試験でのアナフィラキシー症状の出現率を最低限に抑制できることが理想である.
現時点で食物アレルギーの診断のために容易に実施可能な検査としては1.抗原特異的IgE検査(主にCAP法),2.皮膚テスト(主にプリックテスト),3.ヒスタミン遊離試験がある.
これらの検査はどれも感度が高いが特異度が低いという欠点を持つ.
負荷試験のリスクを出来るだけ下げ,かつ効率的に行うためには,これらの欠点を補う検査結果の解釈が必要であり,我々は実際の食物負荷試験の結果を元に各種検査結果を検証してきた.
1.抗原特異的IgE検査は従来Sampsonらなどにより主要な食物抗原に関して95%陽性適中率が示されてきた.
しかし,これらのDataは検証症例数が少なかったり,年齢別の検討が行われていなかったりして,実地臨床との相関性が乏しい面があった.
そこで小俣らはその欠点を補うべく,検討対象症例を増やし,かつ年齢別に負荷試験の結果を検証し,国内で初めて食物アレルギー診断における特異的IgE値のProbability Curveを描いた(JACI.2007).
これによれば抗原ごと,また年齢ごとに陽性率は異なり,特に鶏卵と牛乳に関してその有用性を指摘することができた.
2.皮膚テストは一般的にプリックテストが行われ,特にOASなどの診断におけるプリックプリックの有用性が知られている.
この他にも乳児アトピー性皮膚炎型の診断や耐性化の検証にもプリックテストの結果は有用である.
3.ヒスタミン遊離テストは閾値を設けることで,鶏卵と牛乳においてその診断効率が高まることが示された.
以上のような食物アレルギーに関する検査所見の新たな解釈方法を習得したとしても,最終的な食物アレルギー診断の確定には負荷試験が必要となる.
しかし諸検査の結果から負荷試験のリスクの低いもしくは高い症例を推測し,そのうえで症例に対して試験を実施もしくは実施しないことが出来るだろう.
これは今後外来食物負荷試験が保険収載されれば,入院で負荷試験を行うべき症例と外来でも行えうる症例の判別にもつながり,安全で効率の良い食物負荷試験を実施可能とする.
第20回日本アレルギー学会春季臨床大会 2008年6月開催