・シンポジウム5
食物アレルギー研究の最近の進歩
司会者:海老澤元宏1), 眞弓光文2)(国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部1), 福井大学医学部小児科2))
S5-1.検知法(アレルゲン)の最近の進歩について
穐山 浩, 酒井信夫, 安達玲子, 手島玲子
国立医薬品食品衛生研究所代謝生化学部
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現在,我が国では少なくとも300万人が何らかの食物アレルギー症状を有していると考えられているが,有効なアレルギー治療法はなく,重篤なケースには生命も危ぶまれることがある.
そのためアレルギーを誘発する原材料を含む食品を避けることが,最も一般的な治療・予防法となっている.
このような背景から,我が国でもアレルギーを誘発する原材料を含む食品に起因する健康危害が多く見られるようになり,表示による情報提供の必要性が高まったため,平成13年4月の食品衛生法関連法令の改定に伴い,平成14年4月より本格的にアレルギーを誘発する原材料を含む食品の表示が義務付けられている.
厚生労働省では,発症数・重篤度から,省令で定める特定原材料の5品目(卵,牛乳,小麦,そば,落花生)については,全ての流通段階での表示を義務付け,通知で定める特定原材料に準ずる20品目(いくら,えび,キウイフルーツ等)については表示を推奨した.
これに伴い,平成13年度の厚生労働科学研究班では公的研究機関,大学,企業及び検査機関が協力して,省令で定めた特定原材料5品目の表示を監視する目的で,検知法の開発が検討された.平成14年11月には,その研究班で開発・評価された検知法をもとに,厚生労働省の通知として「アレルギー物質を含む食品の検査方法について」(食発第1106001号)(以下通知検査法)が公表された.
この通知検査法には特定原材料の検知法としてELISA法,ウエスタンブロット法及びPCR法が収載されている.
その後,抽出の改良や標準品の規格化等も追加し,現在まで通知検査法は3回の改正を続けている.
この検査法による監視により表示の適正化が進み,消費者の健康危害防止に効果があったと考えられている.
平成17年度からの厚生労働科学研究班(主任研究者 藤田保健衛生大学 宇理須厚雄教授)では,特定原材料に準ずる品目の検知法の開発が研究され,甲殻類,大豆,クルミ及びキウイフルーツのELISA法や,エビ,カニ,大豆,クルミ,キウイフルーツ,バナナ,牛肉,鳥肉及び豚肉のPCR法が開発された.
本講演では,公定法である特定原材料の通知検査法の解説と特定原材料に準ずる品目の検知法の開発状況や動向について解説する.
第20回日本アレルギー学会春季臨床大会 2008年6月開催