・シンポジウム3
食物アレルギーの最近の動向
司会者:海老澤元宏1), 古江増隆2)(国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部1), 九州大学大学院医学研究院皮膚科学2))
S3-5.食物依存性運動誘発アナフィラキシーの疫学と診断
相原雄幸
横浜市立大学附属市民総合医療センター小児総合医療センター
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近年,食物依存性運動誘発アナフィラキシー(以下FEIAn)はアレルギーの分野では認識が高まってきたが,一般的にはいまだ十分に知られていない状況がある.
一方で,FEIAnが疑われたにもかかわらず,アレルギー専門施設であっても正しく診断されていない症例も散見される.
その理由としては,FEIAnの診断法が確立されておらず,また症例ごとの多様性が大きく原因食物の同定は必ずしも容易ではないことなどがあげられる.
そのため,新たな診断法の確立が望まれている.さらに,成人などにおけるFEIAnの疫学や発症機序など未だ十分に解明されていない点も少なくない.FEIAnの疫学は,これまでの我々の学童生徒における調査結果から,中学生の頻度が最も高く,この対象年齢では約10,000人に一人の頻度であること,男女差(4:1)が明らかであることを報告した.
さらに今回は新たに乳幼児における疫学と成人を対象とした事前調査(約3,000人)結果についても報告する.
原因食物としては甲殻類,小麦製品の頻度が高いが,近年は果物や野菜も増加傾向にある.
FEIAnの診断は,問診,食事内容の精査が重要であり,アレルゲン検索としては,CAP-FEIA IgE抗体,皮膚試験,HRT検査を実施する.
小麦のFEIAn症例では抗ω5グリアジンIgE上昇が診断に有用との報告もあるが,我々の症例では必ずしも有用とは言い切れない結果であった.
確定診断には誘発試験が必須であるが,危険を伴う試験であることから,最重症例を除き同意を得た上で静脈路を確保し,薬剤などの万全の準備の上で複数の医師の管理下で実施する.
原因食品は十分量を摂取させ,運動はトレッドミルを用い15分間,体力に合わせて負荷量を調節する.
症状の誘発の他,血漿ヒスタミン値の一過性上昇(前値の150%以上),FEV1.0低下などにより判定する.
陰性例についてはアスピリン前投与(10~20mg/kg,MAX500mg)により診断率の向上に有用な場合がある.
患者のQO改善のためにはFEIAnの原因食物を明らかにすることである.
今後も疫学調査を継続し,認知度の向上と啓発を行なうとともに診断率向上を進める必要がある.
第57回日本アレルギー学会秋季学術大会 2007年10月開催