・出典:国立病院機構盛岡病院化学物質過敏症外来便り
http://www.moriokahosp.jp/
・独立行政法人国立病院機構盛岡病院 化学物質過敏症外来便り
2004年6月号(Vol.2 No.6)
第16回日本アレルギー学会春季臨床大会報告(その2)
前号でもご紹介したアレルギー学会春季臨床大会の主題のひとつが「環境とアレルギー」でした。
細菌、ウイルスをはじめとして、室内外の各種アレルゲン、住居環境の変化や産業の進歩に伴った原因物質、大気汚染物質、環境ホルモンなどの多数の環境因子が種々のアレルギー性疾患や最近明らかにされつつある化学物質過敏症などを起こしてきます。
今回は一般演題で化学物質過敏症のセッションがあり発表してきましたが、シンポジウムでも「化学物質過敏症の診断・治療の問題点」が取り上げられました。
シンポジウムの中でご紹介しておきたいトピックスがいくつかありました。秋田大学の萱場広之先生は、穀物粉塵と野焼きを中心にお話されました。
盛岡病院の化学物質過敏症外来に通院されている患者さんの中にも野焼きの時期に症状が悪化する方がおられますが、その原因として最近わかってきたこととして、稲藁焼きで発生する刺激臭のある煙にはホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの他、多くの揮発性物質が含まれているとのことです。
その他、昨年建築基準法が改正されてホルムアルデヒド、クロロピリフォスについては規制されるようになりましたが、最近それ以外の物質が原因と考えられる事例がでているようですが、濃度測定などが困難でまだ不明な点があることが指摘されました。
宮城のこども病院の事例や、当院でも何人かの患者さんが来られたイオンショッピングセンターの事例などはいずれもホルムアルデヒド濃度は基準以下でした。
最近報道された耳新しいものとしては(6月16日付朝日新聞)、「環境省所轄の建物でシックハウス」というもので、環境省所轄の財団法人「地球環境戦略研究機関」の建物で2002年6月に新築されました。
「環境と人にやさしい建物」として、床や壁には廃材を多用したとのことです。当時勤務していた元職員は新築直後からめまいや頭痛などの悩まされるようになり2002年10月に北里研究所病院でシックハウス症候群と診断されました。この職員だけでなく、当時この研究所に勤務していた約60人のうち27人が、シックハウス症候群や化学物質過敏症と診断されたとのことです。
新築間もない2002年7月の化学物質濃度測定ではホルムアルデヒド濃度は基準値に近かったそうです。
他の化学物質測定結果については報道では触れていませんでしたが、最近このような事例が増えていて早急な対応が必要です。
また坂総合病院の角田和彦先生からは、ウレタンフォームや、パソコンやプリンターなどからでてくる有機リン化合物も重要な原因物質と考えられること、特に小児期に有機リン化合物の曝露を受けると、思春期近くになると種々の化学物質に反応する化学物質過敏症に移行してくる可能性があるという報告がありました。