・「出典」APEC 環境技術交流バーチャルセンター
http://www.apec-vc.or.jp/j/
・【バイオマス】
本間琢也
筑波大学 名誉教授
新エネルギー総合研究所 顧問
バイオマスとは比較的最近に非地質学的起源を持ち、そしてエネルギー資源として利用可能な全ての有機物質に対する総称であり、産業、商業、農業の各分野における草木廃棄物、市町村における有機廃棄物、動物の糞尿、そして直接エネルギー資源の生産を目的として栽培された農作物などが含まれる。バイオマスエネルギーには固相、液相、気相があり得る。
別の表現を使えば、バイオマス資源は有機物質としての形態を持つ全ての材料を指し、それは元来エネルギー資源のみならず、食料、肥料、飼料、医薬品、その他各種化学製品としても利用が可能である。
しかし、昨今のエネルギー資源の高騰や、地球環境問題に対する関心の高まりを受けて、特にバイオマスエネルギー(又は簡単にバイオエネルギー)が地球規模での注目を集めるようになってきた。
バイオエネルギーは光合成プロセスに由来しており、陸地や水域における植物や各種有機廃棄物において、炭化水素により化学エネルギーの形態で保持されている。
光合成とは植物およびある種の微生物が太陽光のエネルギーを利用して炭酸ガスと水を有機化学エネルギーに転換するプロセスで、大気中の炭酸ガスを吸収するという環境に重要な効果を発揮し、しばしば地球上で最も重要な化学変換であるといわれる。
したがって、これは非化石エネルギー資源であり、再生可能というよりはカーボンフリーなエネルギー資源として認められている。
1860年には、主として暖房や調理のために必要な熱は、木質燃料の燃焼によって供給されていた。
当時バイオエネルギーは全世界のエネルギー需要の70%以上を供給していたが、2000年にはバイオエネルギーの供給割合は約10%にまで低下した。このバイオエネルギー消費量を、1日当たり100万バーレルの石油消費量に等価なエネルギー量を単位として表わすと、1860年には全世界のエネルギー消費量7に対してバイオエネルギーの供給量は5であり、2000年には前者が200であるのに対して後者は20となっている。
すなわち、バイオエネルギー利用量の絶対値はこの期間に数倍に拡大したことになり、バイオマス利用形態も非常に多種類の燃料や有機化学材料や製品に及んでいる。
バイオ燃料およびバイオ変換技術とその生成物について以下に記述する。
バイオ燃料:バイオマスから生成される固相、液相、気相の燃料で、木炭や草炭のような自然に形成されるもの、サトウキビから生産されるエタノールや廃棄植物油から生産されるバイオディーゼルなどがある。
バイオ変換:プラントや微生物を使ってエネルギー形態を変える種々のプロセスで、炭水化物の発酵によるエタノールの生産、有機廃棄物又は汚泥の消化によるメタンの生成などが挙げられる。
バイオガス:埋め立て処分された生ゴミなどの腐敗性有機物の嫌気性分解によって得られる中程度の発熱量を持つガスで、その成分はメタンと炭酸ガスである。
バイオ粗油:高温、高圧下でバイオマスから生産される石油に似た粗油であり、水素を添加して品質を高めることにより、軽油代替の自動車用燃料として利用することができる。
バイオエタノール:サトウキビやトウモロコシ、又最近ではリグノセルロース系バイオマスから生産されるエタノールを主成分とする液体燃料で、ガソリン代替の自動車用燃料として使われる。
バイオディーゼル:軽油代替又は軽油に添加して利用できる液体燃料で、代表的には大豆、菜種、ヒマワリなどの植物油、又は獣脂、又は稲のモミガラのような農業廃棄物から生成される。