・頭痛と物忘れか減しく
「いまの子にメールをやめると}言っても無理でしょう。
みんな、なしの生活は考えられないと言ってました。
彼らは脳の前頭前野に携帯が刺さっている感じ。
でもせめて1日15分以内にするべきです」
携帯電話の体への影響といえば「電磁波」と決まっていた。
だが、森教授の実験は、メールという新たな機能が脳に及ぼす「見えない」影響を警告している。
一方で国民生活センターには毎年、数件だが、自覚的な身体への携帯電話被害について相談も寄せられ続けている。
圧倒的に多いのは吐き気や頭痛だ。
スタイリストのヒデコさん(33、仮名)は今年5月、深夜に突然頭が割れるように痛くなった。
激痛はひと晩中統いた。
その半年前から、左頬には低温やけどのような携帯の形の跡が残った。
3月ごろからは携帯で話すと、決まって左のこめかみにキーンという痛みが走った。もの忘れも激しかった。
電話で、「ちょっとお待ちください」と会話が途切れると、誰に電話をしていたのがわからなくなる。
どもる癖も出た。
だが、フリーで仕事をしているので、携帯は仕事を受けるにも、打ち合わせをするのにも手放せない。
切るとまた鳴り、充電しながらもしやべる、という状態だった。
激痛に襲われた翌日、這うようにして行った病院ではCTスキャンなどで脳の検査もしたが、異常なし。耳鼻科にも回されたが、
「複数の医者が相談しても、原因はわからないってことでした。
携帯電話の影響かもしれないけど、それは実証されてないから、と言うだけ。ただ、左の顎の骨がずれている、とは言われましたけど」
以来、極力、電話を取らないようにした。
仕事は激減したが、痛みはいつの間にか出なくなった。
携帯電話の電波の影響については国によってさまざまな報告がなされている。
ドイツやスウェーデンではネズミでの実験で、脳の血管にある血液脳関門に影響を及ぼすという結果を発表。
イギリスでも、「携帯の電波は子供の脳に有害かもしれない」という報告がまとまっている。
だが、日本は「影響なし」が主流だ。
旧郵政省の「生体電磁環境研究推進委員会」は3年前、ドイツやスウェーデンのデータを否定する実験結果を発表。携帯の電磁波は安全、と言い切っている。
ヒデコさんはいま仕事上の必要性からまた携帯を使い始めた。
漠とした不安を抱えたままで・・・。