・ 杉田台住宅は、1968年(昭和43年)ごろに開発された分譲地で、約900世帯が住んでいる。
住宅地からは、市民の森のある丘陵地帯が一望できる。だが、その展望は異様である。丘陵の尾根沿いに、海上保安庁、NTT、NHK、FM放送局、建設省緊急避難用、携帯電話会社など6基の各種電波塔が、住宅地を睨むようにニョキニョキと乱立しているのだ。
また、住宅地の真上には、洋光台方面に伸びる15万7千ボルトの高圧線も通っている。
「ガンで亡くなった方は、皆さん20年以上ここに住んでいる人たちです。私も12歳から住み始めましたが、子供のころ、いつも家の窓から見える丘の電波塔を見て、安全なのかと心配していました。
この住宅地は電波塔が立つ丘陵からなんの遮蔽物もなく、電磁波が直接当たっているんです」
本田さんが本当に恐怖に感じたのは、今年8月に乳ガンのために入院したときである。本田さんは、主治医に洋光台や杉田台に近い、横浜市立大学病院や南病院での手術を勧められたが、自宅からは遠くても、ご主人の会社に近い横浜のある大病院で手術を行った。
入院中、本田さんはガンで治療中の患者さんに片っぱしから話を聞いた。
「病院内で、ほかのガンの患者さんや脳腫瘍の方などにできるかぎり住所を聞きましたが、本当に愕然としました。皆、家の窓を開ければ電波塔の見える、市民の森周辺の人ばかりなんです。その患者さんたちからも付近で大勢、進行ガンで亡くなっているという話を聞きました。また、入院中に顔は知りませんでしたが、私の家の15軒ほど先のご近所の奥さんが乳ガンで入院してきました。さらに驚いたのは、その2週間後に、その隣の奥さんが喉に腫瘍ができて入院してきたのです。喉に腫瘍ができた奥さんに話を聞きますと、隣のご主人は脊髄の難しい病気でほかの病院に入院中とのことで、そのまた隣のご主人は3年前にガンで亡くなっているとのことでした。もう本当に背筋が凍りました」
ガン患者の異常多発は、杉田台住宅ばかりではない。
6基の電波塔から、西側1キロほどの所に位置する洋光台南団地でも同様である。
「団地の窓を開けると、6基の電波塔がすべて間近に見えます。
私が知っているかぎりでも、この数年間で5軒の家で、ご主人なり奥さんがガンで死んでいます。皆、40~50代ですね」(団地の住民)