・<もはやどこにも逃げ場がない!?>
危険の兆候は、すでにさまざまなサインをともなって現れてきている。
そのひとつが、電磁波過敏症候群である。
電磁波過敏症候群--。
聞き慣れない名称だと思う。
欧米では、すでに専門の認定治療機関が発足しているが、日本ではまだほとんど知られていない。
医療の専門家でさえ、詳しい知識がない人のほうが多いというのが現状である。
いったいどんな症状を引き起こすのか?
実際に、現在も電磁波過敏症候群で苦しむ人の例を見てみよう。
出版関係の仕事に就くAさん(32歳・女性)は、仕事がら毎日のように携帯電話を使用していた。
一日に最低でも1時間以上の通話。
それを5年以上はつづけている。
身体の変調に気づきだしたのは、2年ほど前のことである。
ある日、突然のように激しい頭痛に見舞われた。
次に、目の奥がチカチカと痛みだす。
やがて胸が苦しくなり、猛烈な吐き気に襲われる。
最初は仕事の疲れからくる体調不良かと思った。
が、病院で検査を受けてもどこにも異常はないという。
しかし、その後も頭痛と吐き気は収まるどころか、さらに頻繁にAさんを襲うようになる・・。
イラストレーターのBさん(37歳・男性)は、以前から首筋の痛みに悩まされていた。仕事のストレスかと思っていたが、あるとき体のある異変に気づき、愕然とする。
いつものように、知人との携帯電話の長話の後、頭皮の感覚がマヒしていることに気づいたのである。痺れるような違和感があり、爪先でつついても痛みを感じない。
何より、受信機を当てていた頭の右半分だけに症状が集中しているのだ--思えば、通話中なんとなく耳の回りに違和感を感じたり、通話後に頭の芯が中耳炎のときのような鈍痛を感じることがあった。
首の筋の痛みも、確かに携帯電話の通話の後に頻発している・・。
彼の場合、時折気晴らしに携帯電話で1時間から2時間知人と雑談していた程度の、比較的軽めのユーザーだったことが幸いした。
携帯電話の長話をやめたら、首の痛みなどの症状などがすっかり影を潜めたのだ。
しかし、長期間ダメージが蓄積されていた先のAさんの場合、それではすまなかった。
やがてAさんは電磁波過敏症候群との診断を受ける。医師のアドバイスに従って、携帯電話は廃棄した。
が、現在では、近くの人間が携帯電話をかけているだけでも、軽いめまいを覚えるほどに症状は悪化しているという。
「都心では、ほとんど逃げ場がないんです」と、Aさんは苦笑まじりに語る。
「周囲の着メロの音が、私には地獄のサイレンに聞こえてしまうんですよ」と。
電磁波過敏症候群に対する有効な治療法はまだ見つかっていない。
いや、それどころか、電磁波過敏症候群そのものについて、不明な点が多いのである。
はっきりしていることは、患者数が急激に増加しつつあるということである。