・<なぜ今、携帯電話が問題となるのか?>
それとほぼときを同じくして、80年代がら90年代にかけてクローズアップされてきた新たなる問題--それがOA機器から発せられる電磁波なのである。
パソコンをはじめとするOA機器には、高性能のマイコンチップが組み込まれている。
マイコンチップは、ごく狭い面積の中に、信じられないほど複雑な電子的な配線が組み込まれている。
それがために、このマイコンチップから生じる電磁波は、従来の家電製品から生じる電磁波とは比べものにならないほど激しい。
やがてOA機器に囲まれて働く労働者の中から、頭痛、視力障害、不妊、流産などのさまざまなトラブルが相次ぎ、裁判ざたとなる。
余談だが、マイコンチップの発展の歴史は、ただふたつの点に集約できる。小型化と高性能化である。
皮肉なことに、マイコンチップは小型化すればするほど、電磁波の発生エネルギーは高くなる。
高性能化についても同様である。
つまり、マイコンチップの発展の歴史(小型化・高性能化)は、二重の意味で電磁波を強力なものとし、私たちを苦しめる結果を招きつつあるのだ。
いうまでもなく、最新の携帯電話に組み込まれているマイコンチップは、超小型・超高性能である。
本題に戻ろう。
高圧送電線問題やOA機器問題に見られるように、人体に対する電磁波の危険性はこれまでにもたびたび指摘されてきた。
そういう意味では、携帯電話の危険性を論じることは、古くかつ新しい話題ともいえる。
が、しかし--。
携帯電話の危険性と、それ以前の電磁波の問題とは明らかに質的に異なっている点がある。
それは距離の問題だ。
物理学の初歩の講義で申し訳ないが、電磁波には次のような法則が当てはまる。
それは、電磁波の強さは距離の二乗に反比例する、というものである。
単純な例で考えてみよう。
仮に、あなたから1メートル離れた場所にあるマイコンチップから電磁波が発せられており、あなたが受けるエネルギーを1としよう。そしてこの程度の電磁波なら、たいした問題はないとしよう。
あなたが電磁波の発生源に、半分の50センチだけ近づく。
すると受けるエネルギーはどうなるか?
2倍? いや、違う。距離の二乗に反比例するのだから、4倍の電磁波を照射されるのである。
さらにその半分の25センチまで近づけば、さらにその二乗、つまり16倍のエネルギーを受ける。
12.5センチまで近づけば256倍、さらに6.25センチまで近づけば6万5536倍・・さて、あなたと携帯電話との距離は?