・○どうすればよいか
これ以下の被曝量ならば安全だという基準は、電磁波にはまだ存在しない。おおよその目安として用いられている基準は、1ミリガウスである。
これは高圧送電線とがんとの関係の調査から、1ミリガウス以下の所に住んでいる人に比べてそれ以上の被曝をするとがんにかかる危険性が高くなることに基づいている。
しかし、この1ミリガウスという数値は、あくまで目安として用いられているものであって、正式な規制値というわけではない。
しかも、子どもの場合、大人よりも少ない被曝量で影響が出ると考えられる。
いまのところ日本では、電磁波に関する規制はほとんどなく、野放しに近い状態といえる。
マイクロ波などの高周波に関しては、1990年に郵政省審議会によって「電波利用における人体の防護指針」がつくられた。
この指針を受けて、財団法人電波システム開発センターが「電波防護標準規格」をつくり、自主的に運用をはかってきた。しかしながらこの指針は、10キロヘルツ以下の低周波は対象外となっている。
このようなことから、電磁波対策は基本的にないに等しい状態といえる。
現在学校でできる対策としては、パソコンを使用する際に、使用者が一定の距離をとることである。
その上で、できるだけ短い時間の被曝にとどめることが唯一の対策である。
距離と時間、これが私たちにできる対策であり、なるべくパソコンを長時間至近で使用しないように心がけるべきであろう。
また、パソコンの多くが、画面のある前方よりも、背面や側面からの電磁波の方が強い。
縦にパソコン机を並べている場合は、後方からの電磁波が問題になってくる。教室のレイアウトも、配慮を加えるべきであろう。
電磁波の危険性に対して関心が高まるとともに、電磁波防護グッズが出回り、売れ始めた。
エプロン、シーツ、メガネといったシールド製品から、貼り付けたり、持っているだけで防げるといった商品まで、その種類は多種多様である。
しかし、それらの製品では、基本的に電磁波を防ぐことはできないということを付け加えておく。
あまがさ けいすけ
1947年東京都生まれ。1970年早稲田大学理工学部卒業。雑誌編集者、岐阜経済大学非常勤講師、和光大学非常勤講師、日本ジャーナリスト専門学校非講師を経て現職。主な著書に「原発はなぜこわいか」(高文研)「遺伝子組み換え食品」(緑風出版)「危険な暮らし」(晩聲社)「遺伝子組み換え動物」(現代書館)「くすりとつきあう常識・非常識」(日本評論社)「電磁波汚染」(日本実業出版)「環境ホルモンの避け方」(コモンズ)ほか多数。
AMAGASA, Keisuke / Journalist