・○子どもへの影響
はじめて電磁波の健康障害が浮き彫りになったのは、送電線の問題であった。
1979年、米コロラド大学のワルトハイマ一教授とリーバー教授は、コロラド州デンバー郊外で、送電線や変圧器と子どものがんとの関連を調査した。
すると、日常的に強い電磁波にさらされている子どもは、そうでない子どもに比べて、全がんで2.25倍、脳腫瘍で2.40倍、白血病で2.98倍も発生率が高くなっているという結果が出た。
この報告は全米だけでなく、ヨーロッパ諸国にも衝撃を呼び、以後電磁波が健康に及ぼす影響について、本格的な研究が始まるきっかけになった。
これ以降米国では、職業上の被曝に関する調査も進んだ。
コンピュータの職場や、電気に関わる職業の調査が行われ、がんや白血病、異常出産などの危険性が高いことが明らかになった。
82年には、ワシントン州公衆衛生局のサミュエル・ミルハムによって、電気技術者の健康障害に関する研究報告がなされた。
その中で、電気関連の労働者は、白血病にかかる危険性が、他の職業の労働者に比ベて約2倍であることが指摘された。
89年には、米国連邦議会技術評価局の報告が提出された。
その中には、慢性的な電磁波の被曝が、がん細胞を助長するという研究が蓄積されはじめていると述べられている。
また90年には、米環境保護庁が『電磁波とがん』という報告を出した。
このように、電磁波の健康障害に関しては、主に送電線と子どものがんや、白血病との関係で調査が進んだのちに、やがてパソコンなどの電気製品でも、ひんぱんに調査が行なわれるようになった。
その結果、電磁波は健康障害を引き起こすこと、そしでとくに子どもに影響が大きいことが分かってきた。
人間は電磁波を感知する能力を備えていない。
そのため、たとえ電磁波にさらされていても実感がないので、つい油断してしまう。
しかし、電磁波とがんの関係が認められ、特に子どもに影響が大きいということが分かった今、子どもがコンピュータを使用している際には、周囲にいる大人の注意が必要である。