・ 第5章で評価されている「疫学」も基本的には「影響は明かではない」という評価で統一されている。
しかし、どこを探しても「明かである」条件が何なのかは「明かではない」のである。
人間への影響が問題であるならば、人間を対象にした「疫学研究」が最も重要なはずなのに(私はそのような考えだが)、「学会報告書」ではその点が極めて曖昧なままなのだ。書かれている文章の多くは、「・・・欠点があることが指摘されている」「不適切であることも指摘されている」「関連性がないことを述べている」といった欧米の研究論文からの引用を中心とした評価になっている所が多く、特別委員会自らの評価では「結果に一致性が見られず・・・関連性があるとは言えない」「関連性を示すような証拠はない」と述べているに過ぎない。
疫学研究の多くで、危険性を示唆している事を委員達も認めざるを得ないはずであって、それだからこそ「一致性」「関連性」といった言葉で、「完全な証拠ではない」「明らかに証明されてはいない」と結論しているのである。
しかし、電磁波の人体への影響の「完全なる証明」とはなにであるかを述べてはおらず、今までの疫学研究の知識の延長で話を進めるだけなのだ。
また私が重要だと思っている疫学研究の引用の仕方も、おかしなものである。電磁波被曝がなぜ小児白血病の原因となるかと言う「メカニズム」が明らかになっていない事は確かだが、それを理由にすると「がんのメカニズム」が明らかになるまでは「電磁波に危険性はない」と言う事になってしまう。
今までの電磁波被曝研究で、メカニズムと小児白血病との橋渡しを狙ったたった一つの研究(95年)があることを特別委員会は知らなかったのであろうか。
その研究は、米国・国立労働安全健康研究所のボウマン博士らの研究であり、ロンドン博士やピーター博士(南カリフォルニア大)も共同研究者である。
地球の静磁場によってカルシウム・イオンが影響を受けるというエイディ博士(カリフォルニア大)の75年の発見が、その後60Hz電磁波被曝でも推察された事から、「電磁波被曝+カルシウム漏洩+小児白血病」の相関を調べる研究へと進展したのである