化学物質環境リスクの理解を助ける2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・我が国では主に魚介類を通じてダイオキシン類を摂取しているが,水質や底質の環境基準を満していれば,どこの水域の魚介類を食べてもダイオキシン類の摂取量が許容量を超えないわけではない。

環境基準を超える水域がなくなった状態で全国で獲れる魚介類を万遍なく食べれば,許容量を超えるダイオキシン類を摂取しないレベルに基準値が設定されている。

どこの魚を食べても安全な状態を作り出すには,広い範囲で浄化対策が必要となり,社会に過大なコスト負担をかけるため,実現不可能と判断されたためである。


化学物質汚染がもたらすリスクが全くない状態を作り出すことは,現実的には難しくなっており,一定のリスクを受け入れざるを得ない状況にある。

どこまでリスクを受け入れるかは,個人個人の生き方によって異なると考えられ,個人の判断を総合した社会的合意の下に決定されるべき問題である。


住民が意思決定を行う上では化学物質汚染がもたらすリスクに対する正しい理解が必要となる。

国環研の化学物質環境リスク研究センターの役割は,化学物質汚染のリスクを的確に評価する方法を考えるとともに,それらを用いて分かりやすい形で情報を伝えることにより,住民の理解と意思決定を助けることにあると考える。

行政や住民により近い立場で,問題解決に直ちに役に立つ情報の提供を心がけていきたいと考えている。


国立環境研究所では,ダイオキシン類や環境ホルモンを始め,化学物質汚染のリスクに係る多くの情報を産み出す研究が進められている。

また,国内の多くの研究機関でも,また国際的な協力の下でも化学物質に係る情報の整備が進められている。

それらを的確に評価・加工し,何がどこまで分かっているのか,まだ分かっていないことは何なのかを伝えていきたいと考えている。


我々研究者も自らの生き方に基づく化学物質汚染のリスクに対する評価はそれぞれに持っているが,自らの生き方を押しつけることは避け,情報の提供にあたっては自らの生き方に係る個人的な見解と科学的知見に基づく情報とを明確に区別して,客観的な情報の提供に努めていきたい。(なかすぎ おさみ,化学物質環境リスク研究センター長)