・(耳鼻科疾患)
Ⅰ シックハウス症候群(SHS)とアレルギー性鼻炎
SHSの症例は高い割合で鼻内刺激感、ムズムズ、鼻閉、嗅覚異常といった鼻症状を伴うことが知られており、アレルギー性鼻炎との関連が注目されてきた2,3)。
しかし、アレルギー性鼻炎は後述するように、IgE抗体を介した鼻粘膜で生ずる典型的なⅠ型アレルギー疾患であり、患者のほとんどで原因抗原の同定が可能である。
他方、SHSはホルムアルデヒドなどの化学刺激物質にIgE抗体を有する症例もみられるが、IgE抗体を介したⅠ型アレルギー疾患ではない。
現在、日本ではダニに対する感作率は小児では50%近くに、スギ花粉に対する感作率は20歳代では70%に達しており、SHS症例にアレルギー性鼻炎の合併やアトピー体質がみられることは多い。
それだけで病態の関連を指摘することは難しい。
SHS症例への詳細なアンケート調査からアレルギー性鼻炎との症状比較を行ったところ1)、アレルギー性鼻炎では特にくしゃみの頻度が高く、SHSが10倍以上と高い頻度でみられる症状は, まぶしい、においに敏感、のどがヒリヒリする、のどがつかえる、のどが乾きやすい、耳がかゆい、皮膚がチクチクする、皮膚が赤くなる、めまい・たちくらみ、頭が重い、息がしにくい、体がだるい、眠れない、将来に希望が持てなくなるなどである。
これらはアレルギー性鼻炎でも認められるQOL低下項目であるが、SHS症例に高率に認められていた。