SHS診療マニュアル12 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・Ⅶ 対処法・薬物治療
アレルギー疾患、シックハウス症候群ともに原因物質の除去を目的として空気清浄に努める必要がある。

アレルギーにおけるダニ・カビ・ペット抗原除去には室内掃除やヘパフィルターが有用だが、環境整備のみでは不十分であり、薬物療法が必要である。

シックハウス症候群の原因物質であるVOCは低分子のため、ヘパフィルターでは除去できず、換気に努めると共にVOCを吸着する空気清浄機を室内に設置する。
気管支喘息や咳喘息の症状に対してはβ2交感神経刺激薬が著効を呈することよりシックハウス症候群の呼吸器症状との鑑別に利用できる。

アトピー咳嗽にはβ2交感神経刺激薬は無効だが、H1ヒスタミン受容体拮抗薬が有効のことが多い。

グルココルチコステロイドはこれらのアレルギー疾患全般に有効であり、アレルギー性呼吸器疾患には吸入ステロイド薬が長期管理薬として汎用され有効かつ安全である。

シックハウス症候群は病態が不明のため病態に基づいた薬物は存在せず、現時点での薬物療法は対症療法薬のみである。
Ⅷ 臨床経過
アレルギー性呼吸器疾患は、一部の重症例やステロイド抵抗例を除いて前述の環境整備や薬物治療で症状のコントロールが可能である。
シックハウス症候群は、発症原因が建物内のVOC濃度の異常な上昇であった場合は自然経過あるいは環境整備によるVOC濃度低下により症状は完全消失する。
Ⅸ アレルギー疾患の合併
1.疫学
シックハウス症候群における気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹等、アレルギー疾患のいずれかの合併は60~80%と高率であり、本邦の一般的な有病率である30%を大きく上回る。

この点でシックハウス症候群とアレルギー疾患は病態上何らかの関連がある可能性が残る。

このゆえに、現時点ではより厳密な鑑別診断が必要と考えられる(文献1-3)。
2.気管支喘息の発症と増悪への化学物質の関与
気管支喘息の発症にはアレルゲン以外の環境因子の関与が示唆されており、屋内環境汚染物質としての煙草燃焼煙をはじめとする様々なVOCの影響が疑われる(文献4)
Ⅹ まとめ
以上のように、アレルギー疾患は、① 発症様式が類似している ② 粘膜・皮膚刺激症状がみられる ③ 原因物質の回避により症状が軽快する、という点でシックハウス症候群に類似しており、① 原因物質が高分子蛋白である ② 精神・神経症状がみられない ③ アレルギー学的検査が診断に有用である ④ アレルギー病態に基づいた治療が有効、という点でシックハウス症候群とは異なる。

これらの点を踏まえて、発症初期にアレルギー疾患の鑑別あるいは合併を確認しておくことが重要である。

病態が明らかであり管理基準がほぼ確立しているアレルギー疾患が存在するのであれば、それにしたがった治療を実施できるからである