・③アレルギー疾患の鑑別
(内科・小児科)
Ⅰ はじめに
Ⅰ型アレルギーに属する気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎は、ダニの虫体や糞、真菌、ペット皮屑のような屋内環境抗原によりアレルギー反応が起こるため、建物内で症状が発症・増悪することが多く、シックハウス症候群との鑑別が必要となる。
本章では、特に内科・小児科領域で問題となるアレルギー性呼吸器疾患との鑑別(表参照)について概説する。
Ⅱ 症 状
シックハウス症候群の粘膜・皮膚刺激症状のうちでアレルギー性呼吸器疾患との鑑別が問題となるのは、咳嗽、呼吸困難感であり、喘鳴は気管支喘息の合併がない限り稀である。
咳嗽は主に乾性咳嗽であり、気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽、喉頭アレルギー等との鑑別が必要である。
呼吸困難感はあくまで自覚症状であり、客観的な検査による呼吸器疾患や神経・筋疾患との鑑別を要する
アナフィラキシーでもシックハウス症候群にみられる倦怠感、脱力感、全身の冷感等が起こり得るが、通常は食物や薬物の摂取やハチ刺傷後に生じることが多く鑑別は容易である。
Ⅲ 性別・年齢・遺伝的素因
シックハウス症候群の発症年齢は30歳代~40歳代に多く、圧倒的に女性に多いことが報告されているが、小児では報告が少なく男女差は不明である(文献1-3)。アレルギー疾患は、呼吸器系、目・鼻粘膜系、皮膚アレルギーのいずれも全ての年齢で発症するが小児に多い。
男女差は、小児では男子が多く、成人では女子が多い。
気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等は、IgEの関与するⅠ型アレルギーによるものであり、過剰なIgE抗体産生という遺伝的素因がこれらの疾患で明らかになっている(文献4)。
シックハウス症候群は疫学調査が不十分ではあるが、現在のところ、その発症に遺伝的素因は証明されていない。