・②シックハウス症候群対策・研究の歴史的背景
シックハウス症候群はSick Building Syndrome(①を参照)から派生した和製英語である。
SBSにおいても建物内における健康障害の原因が明確な場合、例えばレジオネラ感染症などはSBSには分類されず、そのままの病名が用いられる。
強いて建物と関連させるならSBSではなく、ビル関連病(Building Related Illness)と呼ばれる。
同様にシックハウス症候群においても居住空間内における体調不良の原因が明確な場合、つまり、アレルゲンによるアレルギー性疾患、病原微生物あるいは病原微生物由来の物質による感染症、一酸化炭素(CO)などの有毒ガスによる中毒は狭義にはシックハウス症候群に含めないのが一般的である。
これらのものを除外すると、本邦におけるシックハウス症候群は建材、内装材、塗料、家具、什器、などから発生する化学物質によるものを指すと言うことができる。
化学物質は身の回りに数え切れないほどあるが、何らかの形で生体に作用しなければ生体には影響しない。
どれほど有害な物質であってもヒトの居住環境で、つまり平均気温15℃、一気圧という条件下で固体、液体の状態でしか存在しないものは、さわる、あるいは口に入れる等、意図的な行為がないかぎり生体には作用しない。
そういう行為がなくても生体に作用するのは、居住環境で空気中に気体の形で存在する物質、つまり揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds – VOCs)ということになる。
その観点から揮発性有機化合物のなかでも生体影響が大きいと考えられる13物質について室内濃度指針値が策定されている。
ただし、この指針値は慢性毒性指標から導かれたものであり、しかもかなりの安全マージンを取ったものであることは知っておかねばならない。つまりこの値を少しでも超えれば、生体に悪影響を及ぼすとかシックハウス症候群をおこすとか、そういう値ではないということである。
「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」策定の室内濃度指針値