・すなわちSBSとは、
①その ビルの居住者の20%以上が急性の不快感に基づく症状の訴えを申し出る。
②それら症状の原因(因果関係)は必ずしも明確である必要はない。
③それら症状のほとんどは、当該ビルを離れると解消する。
の3つの要件を満たしている場合のことであり、一方、BRIとは、
①
居住者の症状の訴え(最低1ビルにつき2名以上)が、臨床的に明確な疾病の結果と認定される。
②
その訴えの原因と思われる室内空気汚染質が、特定されている。
③
それら症状が快方に向かうためには、当該ビルを離れてからかなりの長時間を要する
の3つの要件を満たしている場合のことである。
このBRIの典型例は、在郷軍人病であると言う。
レジオネラ症とは、1976年、フィラデルフィアのベルビューストラスフォードホテルで開かれたアメリカの在郷軍人大会において、肺炎に似た症状の病気が発生し、182人が罹病し、29人が死亡すると言う事件が起こった病気のことを言う。
後から考えれば全くの偶然であったが、その当時は、原因不明の上、大会に参加した在郷軍人だけが罹病し、手当の甲斐もなく次々と死んでいったため一大センセーションを巻き起こした。
この病気の原因は、レジオネラ菌という通常は土壌中にいて建物内部に大量に侵入することなど滅多にない種類の菌が、何等かの原因で、このホテルのクーリングタワーに入り、そこで繁殖した後、クーリングタワーから霧散し、それを近くにあった外気導入口から空調機が取入れ、全館に輸送したことにあった。
この菌に感染すると症状は肺炎と似ているが、治療法が全く異なる病気になるため、肺炎の治療をしている間に病状が悪化し、多くの死者を出すことになった(Turiel 1985)。
この在郷軍人病とは、わが国でも起こっている。
レジオネラ以外の例としては、都内の小規模オフィスビル で起こった空調系統を伝わって感染したと思われる結核の集団発生問題(簑輪1983)があげられる。
このように、SBSは、元々は、オフィスビルにおける空気汚染問題を対象とした言葉であったと思われるが、SBSのような問題は、オフィスビルに限ったことではないため、住宅、学校などの他の一般環境(鉱山・工場などの労働環境でないと言う意味での)における空気汚染問題を表す言葉と考えられる。
室内汚染物質濃度とSBSの定量的な関係を示す資料は多いとはいえないが、Goldish(小林訳1998)によれば、Norbackら(1990)が、実施した11件のビルにおける調査の結果図1に示されるような関係が得られているとのことである。