・ア認否
上記ア,オ(ただし,検査結果には,JIS規格の検査方法によっていない旨の注意書きがされている。),カは認める。
上記イないしエは不知。
上記キは争う。
イ反論
本件集成材の試験結果は,いずれも厚生労働省のシックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会における指針値を上回るものではなく,申請人の発症と本件集成材との因果関係があるとは認められない。
また,申請人は,その被害の発症が本件集成材購入直後であるかのように主張するが,その発症後半年以上も経過してから,被申請人に対し,被害の主張をするに至ったのであって,その間の具体的な事実経過が不明である。
第3 当裁定委員会の判断
被申請人は,申請人の健康被害が法の定める「公害」に該当せず,本件が法42条の27第1項所定の「公害に係る被害」についての紛争には該当しないから,申請人の本件裁定申請はその適法要件を欠き,却下されるべきである旨主張するので,まず,公害性(相当範囲性)の有無(被申請人の本案前の主張
の当否)に関する争点について検討する。
1 本件集成材の被申請人店舗からの購入及び申請人の症状
前記第2の1の1),2)のとおり,申請人は,平成16年4月25日,被申請人奈良店において,本件集成材を購入し,その後,北里研究所病院において,化学物質不耐症(過敏状態)に基づく中枢神経機能障害等の診断を受けたことが認められる。
2 申請人の主張する健康被害と法の定める「公害」概念について
1) 法の定める「公害」概念
法2条には,「この法律において,『公害』とは,環境基本法(平成5年法律第91号)第2条第3項に規定する公害をいう。」と定められており,環境基本法2条3項には,「この法律において『公害』とは,環境の保全上の支障のうち,事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる
大気の汚染,水質の汚濁・・・及び悪臭によって,人の健康又は生活環境・・・に係る被害が生ずることをいう。」と定められている。
そして,上記のとおり,同条項によれば,「公害」といえるためには,大気の汚染等の被害発生原因となる現象が相当範囲にわたることが必要とされているところ,「公害」について,一般の不法行為の事案とは別個の取扱いを必要とする理由は,その社会性,公共性にあるのであって,ある程度の広がりを持つ必要があるという点にある。
とすれば,相当範囲にわたるか否かは,大気の汚染等の被害発生原因となる現象の及んでいる人的範囲と地域的範囲とを総合勘案して,ある程度の社会的広がりを有するか否かによって判断されるべきである。