化学物質不耐性における神経の可逆性:第一部5 | 化学物質過敏症 runのブログ

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てんかんのキンドリングモデルは本態性多種化学物質過敏状態の理解に貢献するか?

本態性多種化学物質過敏状態(MCS)は、環境中に低濃度存在する化学物質に対して感受性が増加する現象である。

キンドリングはシナプス可塑性のモデルであり、低いレベルの電気刺激を繰り返すことにより、てんかん発作の感受性が持続的に増加する。

臨床的な発作にはいたらないような低い閾値の電気刺激を繰り返し与えた場合、一定の期間を過ぎるとその刺激は完全な運動発作を誘発するようになる。キンドリングは化学的な刺激によっても誘発することができる。

ある種の農薬に繰り返し曝露されると行動異常を示すようになるが、連続曝露は電気キンドリングを促進し、扁桃体において臨床閾値下の過剰興奮性を示す電気的な活動を誘導する。

MCS にはいろいろな症状があり、MCS の患者の中には不安に関係している大脳辺縁系が変化している人がいる。

大脳辺縁系は、キンドリングで誘導された発作に対して最も感受性の高い部位であり、ヒトの側頭葉てんかん(TLE)患者や動物のキンドリングモデルで認知や情動に関する持続する変化が示されてきた。

このように、キンドリングとMCS という現象の間には多くの類似点があり、MCS がキンドリングのメカニズムによって起こるものではないかと推察された。

しかし、キンドリングには電気的な発作放電が必要で、だからこそTLE のモデルとして使われている。

臨床的な発作に至る前の最初の変化というのはほとんど研究されていないが、これらの変化こそが、MCS に特徴的な化学物質への反応性増強をうまく説明するのかも知れない。

キンドリングは、恐怖に関する神経回路の感受性を選択的に増加させるツールとして有効で、MCS の発達や発現における不安の役割に関係することかも知れない。

コリン系過敏反応の遺伝的ラットモデル:化学物質不耐性、慢性疲労、喘息への関連性
環境中化学物質の曝露を受けた人の中でも化学物質不耐性に進行するのはごく一部であるという事実は、遺伝的要因が寄与している可能性を示している。

本報告では、コリン性システムの異常が遺伝的要因により起こりうることを示唆するコリン系強反応状態の遺伝的動物モデルからの結果を要約する。

FSL(Flinders 感受性ライン)ラットは有機リン化合物への反応が増加したものを選択繁殖することで確立された。

通常の対照ラットやFRL(Flinders 耐性ライン)と比較すると、FSL ラットはムスカリン系の直接的作動剤に対しても感受性が高いこと、ムスカリン性受容体が多くなっていたことが次々に明らかとなった。

コリン系薬剤に対する反応増強はいくつかの人間集団でも観察されており、その中には化学物質不耐性の患者も含まれている。

確かに、FSL ラットは睡眠異常、活動性異常、摂食異常など、これらの人間集団に類似した行動特性を示す。

加えて、FSL ラットはその他の化学物質に対しても強い感受性を示すことが報告されている。

腸や気道の平滑筋などの末梢組織はコリン性薬剤や抗原、卵白アルブミンに対してより強い感受性をもつと思われる。

中枢性の反応である低体温症は、ニコチンやアルコール、ドーパミン系およびセロトニン系の選択的薬剤投与によりFSL ラットでより顕著に現れる。

いくつかのケースでは、感受性の増強が見られる際に、他の受容体(ニコチン受容体)は変化するが、その薬剤が作用する受容体(ドーパミン受容体)の変化を伴わない。

すなわち、FSL ラットにおける多種化学物質過敏状態-化学物質不耐性には複数のメカニズムが関与すると考えられる。

これらのメカニズムの解明は、人間の化学物質不耐性についての有用な手がかりを提供できるだろう。