化学物質不耐性における神経の可逆性:第一部4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・第二章 化学物質不耐性の動物モデル
中枢神経系可塑性の役割
多種類化学物質過敏症の動物モデルに対しての反復ホルムアルデヒド負荷の効果
化学物質不耐性とは多種類化学物質過敏症で認められる症状であるが、揮発性有機化合物曝露により引き起こされるヒトの定義しにくい症状である。

多種類化学物質過敏症の患者の症状の増幅は、げっ歯類で見られる精神刺激物質誘発の過敏性獲得やストレス誘発の過敏性獲得と類似している。

我々は最近反復化学物質は中枢神経回路に感作状態を誘導することを明らかにし得た。

我々の研究室での多種類化学物質過敏症モデルとしてのラットの実験では、反復したホルムアルデヒド曝露(毎日1 時間、週5日間、4 週間)後の中枢
神経系の種々な変動を観察した。

反復ホルムアルデヒド曝露は、後にコカイン注射に対しての行動の過敏性獲得を示し、メゾ辺縁系のド パアミン作動性神経の感度の変調を示唆していた。ホルムアルデヒド反復曝露ラットはフットショックと組み合わせた。


MCSのモデル動物におけるホルムアルデヒドの反復曝露の生体効果
化学物質不耐性は、揮発性有機化合物に曝露されたヒトにおける本態不明の疾病異常であるMCS 症候群で観察される現象である。

MCS 患者においてその症候が時間とともに増幅していく現象は、げっ歯類において心理的刺激・ストレスで惹起される過敏化の現象と類似している。

我々は最近、ラットを用いて、化学物質への反復曝露が中枢神経系の神経回路の過敏化を誘発するという仮説を検証している。

我々の研究施設ではMCS モデルラットを用いて、反復性のホルムアルデヒド曝露(1時間/日×5日/週×4週)の後に、中枢神経系機能のいくつかの指標を調べた。

その結果、反復性の曝露によって、曝露後に実施したコカイン注射による行動学的変化の過敏化が観察され、このことから、曝露により大脳辺縁系中心部におけるド-パミン神経の過敏性が変化することが示唆された。

曝露ラットではまた、足への電撃ショックと対呈示された匂いへの恐怖条件づけが強化されたが、このことは条件づけられた匂いに対して恐怖反応を誘導する神経回路が増強されたことを意味している。

ホルムアルデヒドへの連日曝露が曝露中の自発行動に与える効果を調べた
最近の研究では、曝露12~15日目での立ち上がり行動の減少が見られている。

さらに、連日曝露からの離脱後1週間でのEEG記録では、睡眠構築の変化が観察されている。

この睡眠の変化のいくつかは、その翌日の短時間(15分間)再曝露により消失した。

これらの所見をまとめると、低濃度の化学物質への反復曝露が、MCS 患者に見られるものと類似した行動変化、例えば、曝露に対しての不安感の増大として表れる化学物質への感受性増加、あるいは睡眠・疲労感の変化などを動物に誘発できることを意味している。

それらの動物の中枢神経系に生じる変化を調べることは、MCS の作用機序に基づいた動物モデルの開発につながるであろう。