食卓シリーズ・第13部 命の入り口心の出口3 | 化学物質過敏症 runのブログ

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偽装表示や残留農薬問題、激化する食料品の価格競争などによって、「食品」に対する私たちの関心は高まってきました。

でも、口の中に入れた後のことは、考えてきたでしょうか。

食べ物は口で噛み、胃や腸に送られて初めて血や肉になるというのに。

「食卓の向こう側」第13部「命の入り口 心の出口」では、咀嚼をテーマに、私たちの健康や医療のあり方などを考えます。
食卓シリーズ・第13部 続・命の入り口心の出口<1>歯周病 8割が患う「国民病」に
 ■食卓の向こう側シリーズ 第13部■


 「朝晩2回、毎日歯磨きしているのに何で…」。

ピンクに染まった自分の歯に、思わず叫びそうになった。
 福岡市の船越歯科医院で受けた歯垢(しこう)(プラーク)の付着をチェックする「染め出し」検査。

普段より入念に磨いたつもりなのに結果は無残だった。
 「歯と歯茎の間や歯間などにブラシが当たっていないんです。正しい歯磨きをまず覚えてください」と院長の船越英次(62)。
 ブラシの持ち方から始まり、前歯、奥歯、その裏側-。

「食卓の向こう側」取材班に長年かかわりながら、50歳近くにもなって歯磨きを習うのに少々情けなさを感じながらも、これまで歯磨剤の清涼感だけで磨いた気になっていた実態を痛感した。
 そして歯周病の診断。歯と歯茎の間の溝(歯肉溝)に探針を入れ、その深さを測る。

3ミリ以内なら問題ないが、船越が告げた数値は、それを上回っていた。
 「重度の歯周病。放置すると、歯がなくなりますよ」   

 かつて歯槽膿漏(のうろう)と呼ばれた歯周病は今や、国民病といわれる。厚生労働省によると、20歳以上の8割は程度の差はあれ歯周病を患っており、5―19歳でも4―6割が何らかの形で歯茎に問題があるという。
 歯周病は口内細菌によって引き起こされる感染症だ。

細菌は、食べかすを餌に繁殖。歯にべったり付着し、細菌の集団である歯垢となる。

ヌルヌルの歯垢が歯肉溝に入り込み、定着したのが歯周ポケット。

歯周病菌はここで炎症を起こし、徐々に歯根の周囲の骨を溶かす。
 厄介なのは、自覚症状のなさ。

口臭がひどくなったり、歯茎から出血したときは、もう「重度」という場合が多い。
 「対策は正しい歯磨きと、歯の定期検診。それと、唾液(だえき)を出す食生活を心掛けること。それしかない」。船越は言った。  

 「ヒトが歯周病になるのは、火を使い始めたときからの宿命」と、福岡歯科大学教授の坂上竜資(50)は解説する。
 火がなかった時代、ヒトは他の動物と同様、硬い食べ物をそのまま食べた。よく噛(か)むことで唾液の分泌を促し、豊富な食物繊維が自然の歯磨きとなって、虫歯と同時に歯周病も防いだ。
 それが火を使った調理によって一変。

栄養吸収は格段に良くなったものの、代わりに、新たな病を引き受けることになったという。
 噛まずに済む軟らかいものを食べ続けるとどうなるか。

日本歯科大学新潟歯学部が行ったサルの実験がある。
 ニンジンやリンゴなど、栄養バランスを考えた餌を、片方にはそのまま、もう片方にはミキサーでドロドロにして与え続けた。

3カ月後、固形食のサルは何の問題もなかったが、ミキサー食の方は歯垢が付いて歯茎がボコボコに。

1年半後には歯石が付いて出血する状態になった。
 軟らか食が多い現代の食卓では、予防がなかなか難しい口の生活習慣病、それが歯周病なのだ。 (敬称略)