食卓の向こう側・第6部  | 化学物質過敏症 runのブログ

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・「出典」西日本新聞
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/lifestyle/shoku/rensai/
・食卓の向こう側・第6部 産む力、生まれる力<1>現代人 自然なお産難しく 偏食が母体にも影響

前日生まれたばかりの赤ちゃんを、母親と見守る大牟田智子さん(右) 飽食、運動不足、環境汚染…。経済が発展し、効率化した社会の恩恵を享受する一方、生活そのものが「自然」から遠ざかっている現代。

食卓の向こう側・第六部「産む力、生まれる力」では、命の始まりと向き合う「お産」を通して、私たちの生き方や社会のあり方を見つめます。

 民家のような畳敷きの一室。春日助産院(福岡県春日市)には、病院のような機器類は見当たらない。

時計の針が午前二時を回った。

隣室の明かりがほのかに照らす布団の上でお産が始まった。

 「もうすぐだよ。しっかり息して、赤ちゃんに酸素を送ろうね」。白衣ではなく、Tシャツにエプロン姿の助産師が、産婦の腰をマッサージしながら、静かに語りかける。

バーススツール(出産用のイス)にまたがった産婦が強い陣痛に従っていきむと、赤ちゃんの頭が見えた。

「上手ね。もう楽にしていいよ」。

産婦が力を緩めると、重力の助けを借り、つるっと生まれた。

赤ちゃんは、羊水を自分で鼻と口から「ぐしゅっ」と出して「ほにゃー」と泣いたが、母の胸に抱かれるとすぐ、穏やかな表情に戻った。

 立ち会った家族が、新しい命を囲んで約二十分。助産師が言った。

「へその緒の拍動が止まったね。そろそろ切ろうか」。子宮は、赤ちゃんが十分肺呼吸できるようになったころ、自然にへその緒から血液を送ることをやめ、胎盤をはく離しようとする。

自然な流れに合わせてへその緒を切り、後産も済ませた助産師は、手際よく赤ちゃんに母乳を吸わせた。

 「乳首が刺激されると、子宮をぎゅっと収縮させるホルモン(オキシトシン)が出る。産後の異常出血を防ぐため、ほ乳動物の体が備えた自然の止血法なのよ」

 体が本来持つ力を最大限生かすお産をサポートする春日助産院。最近、「なるべく薬や医療技術に頼らない『自然なお産』をしたい」と、助産院を訪れる妊婦が増えた。

だが、院長の助産師大牟田智子(45)は、こう指摘する。
 「そういう人でも、実は『自然に産める体』になっていないことが多いんです」
 妊娠五カ月で来院した女性は、朝がパン一枚、昼は買った弁当、深夜に焼き肉やハンバーグを外食し、野菜は食べてもサラダだけという生活。

子どものころからの運動不足で体は硬かった。
 「そのまんまでは難産が目に見えている」と大牟田。子宮や卵巣、胎盤など生殖器には、毛細血管が張り巡らされている。

「偏食で血液がどろどろになると、生殖器は本来の機能を発揮しにくく、病気も起きやすい。お産に必要なホルモン分泌もスムーズにいかない」というのだ。その女性は来院後に食生活を見直したものの、弱い陣痛が九日間続き、本格的な陣痛から三日がかりでお産した。
 また、ダイエットや手軽な食事で鉄欠乏性貧血(酸素を運ぶ血色素の欠乏)になっている妊婦も、来院者の半数近くに上る。

重症になると、母体からの血液だけで成長している胎児の「生まれる力」にも影響しかねない。