福岡都市圏の小学校に勤務する女性教師は「給食の時間は苦痛です」。
給食タイムは四十五分間だが、準備や後片付けを除くと、実際に食べる時間は十五分から二十分の間。
「ゆっくり、よくかんで」と言いながら、子どもをせかせる自分がそこにいる。
かつての「教師が横に立って、残さず食べるまで見ている」光景は、今はない。食物アレルギーによっては、牛乳が手にかかっただけで発症し、病院に運ばれるケースもあるからだ。
親の変化もある。嫌いなものが入っていたのか、おかずを箸(はし)でつつくばかりの子に「一口だけ食べてみようか」と促した翌日、「好き嫌いがあっても今は違うものを食べて補えるからいいじゃないですか」。
同世代の母親から猛烈に抗議された。
「食べることは、生きる力と直結している。
好き嫌いのない子は、友達にも好き嫌いがないし、なにごとにも前向き。
その一環と思って指導したんだけど」と悩む。
戦後の学校給食は、食糧難の中で子どもたちの栄養確保のため、米国の援助物資などをもとに始まった。
今は「栄養バランスがとれている」「弁当をつくる手間が省ける」との理由で、給食に期待する親も多い。
「一日三回のうちの一回、一年間で百八十回の食事。子どもの食は学校だけではない」(学校給食関係者)。
だが、偏食、孤食など、家庭の食が崩壊の危機にさらされている状況で、給食は、子どもの心と体を守る最後のトリデといった感すらある。
■給食のない日は栄養摂取量下がる
日本体育・学校保健センターが1997年、全国の小学5年生と中学2年生計4600人を対象にした食事調査によると、給食のない土曜日は給食のある平日に比べ、カルシウムや鉄分など脂肪以外の多くの栄養素の摂取量が低くなっていた。
(2004/06/15,西日本新聞朝刊)