・食卓の向こう側・第3部 給食 未来をひらく<1>食事難民 子どもを守るトリデ
給食のスタイルは多様化。福岡県春日市の中学校では注文式の給食弁当を取り入れている。
自宅から持参した弁当、校内売店で買ったパンやおにぎりを食べる生徒も 食卓の向こう側・第三部「給食 未来をひらく」では、だれのための、なんのための給食かを見据えながら、現状と課題、そして給食の向こうに横たわる社会の姿に迫ります。
・「食べていない」「食べていない」「食べていない」…。
九州北部の小学校で行われた食生活調査。家庭での食事内容を書いた高学年男児の調査用紙には、目を疑うような言葉が並んでいた。
対象の金―日曜日の三日間のうち、男児が家庭で口にした食事は、日曜日夜の「ハンバーグ、ごはん、やさい」の一回だけ。感想欄には「なにも食べてないからわからない」(金曜日)、「おなかがとてもすきました」(土曜日)、「ひさしぶりに食べたのでおいしいと思いました」(日曜日)。
「家庭が落ちついていなくてですね。
何も食べていないわけではなく、食事と呼べるものが与えられていないようなんです。
給食ですか。二人分は食べています」。児童の事情を知る教師は声をひそめて話した。
「極端な例」と言われるかもしれない。だが、“普通”の小、中学生でも、給食のない日は、給食のある日より、栄養の充足率が下がる傾向がある。
給食で命をつないでいるのは、決してこの男児だけではない。
朝食抜きで登校し、午前中にエネルギーが切れて机に突っ伏す子。
一人でテレビ相手の食事が多く「みんなで食べる給食が好き」という子。
「今日は給食があるから、まあいいか」。
そんな親の意識を背景に「飽食の中の“食事難民”が増えている」と、この教師は思う。