日本においては、乳幼児の定期の予防接種としては、生後6ヶ月までで見ると、チメロサール( thimerosal )が添加されたワクチンは、三種混合(ジフテリア・破傷風・百日咳)を3回接種するだけです。
製造元によりチメロサールの含有量が違いますが、チメロサールの含有量は減量の方向にあり、1回の注射量0.5ml中0.005mg(5マイクログラム)のチメロサール(2.5マイクログラムの水銀)の会社が多いです。
その場合、日本においては、生後6ヶ月までで見ると、3回の注射で0.015mg(15マイクログラム)のチメロサール(7.5マイクログラムの水銀)が注射される可能性があります。
1999年のアメリカ合衆国での生後6ヶ月までのチメロサール注射量と比較すると、かなり低い値となっています。
微量のチメロサールのエチル水銀による毒性については、過敏症を起こすことがある以外、よくわかっていません。
ただ、同じく有機水銀であり、化学構造も近いメチル水銀と近いと思われます。そこで、人が微量の物質を摂取する場合の安全基準については、メチル水銀の基準がチメロサールのエチル水銀の基準にも使われています。
しかし、この安全基準は、種種の機関から出されていて、基準値が統一されているわけではありません。
アメリカ合衆国だけでも、EPA ( Environmental Protection Agency: 環境保護庁)、ATSDR ( Agency for Toxic Substances and Disease Registry )、FDA ( Food and Drug Administration: 食品医薬品庁)の三つの機関が基準値を出していますし、世界保健機関(WHO)も基準値を出しています。
この四つの機関のうち、水銀重量として基準値で一番低いのがアメリカ合衆国のEPAで0.7マイクログラム/kg体重/週(0.1マイクログラム/kg体重/日)、一番高いのが世界保健機関(WHO)で3.3マイクログラム/kg体重/週(1999年の設定値)でした。
1999年のアメリカ合衆国では、定期の予防接種を受けることでアメリカ合衆国のEPAの基準を超えた乳児がいたものと考えられますが、現在では、アメリカ合衆国でもチメロサール( thimerosal )が添加されていないワクチンを注射すれば、ワクチンではアメリカ合衆国のEPAの基準を超えないものと思われます。
なお、アメリカ合衆国では、メチル水銀の安全基準について、EPA が 0.1 マイクログラム/kg体重/日、ATSDR が 0.3 マイクログラム/kg体重/日、FDA が 0.4 マイクログラム/kg体重/日と三つの機関がバラバラな基準を出す中で、National Research Council ( NRC ) が EPA の基準を再検討し、EPA の基準値を妥当であるとしました(参考文献9)。
EPA の基準値は、RfD( Reference dose:参照用量)と呼ばれます。
一生の間、人の集団が毎日暴露を受けても有害な影響のリスクがないと思われる推定用量です。
一日あたり、人の体重あたりの用量で示します。