チメロサール( thimerosal )は、水銀を含む有機化合物(有機水銀)です。
その殺菌作用は、昔から知られていて、1930年台から、種種の薬剤に保存剤として使われてきました。
薬剤に病原体が混入して薬剤の使用で感染症となってしまうのを防ぐためなどの目的で使われてきたのです。
上記のオーストラリアでの事件のような悲劇を防ぐためにチメロサール( thimerosal )は、1940年ころからワクチンの保存剤として使われ始めました。チメロサール( thimerosal )は、生きているウイルスや菌が入っている生ワクチンでは使われませんが、死んだ菌などが入っている不活化ワクチンでは保存剤として主に使われるようになりました。
しかし、チメロサール( thimerosal )が添加されていても細菌でワクチンが汚染することは少ないながらもあります。
チメロサール( thimerosal )が保存剤として添加された3種混合ワクチンが入ったビンがA群連鎖球菌で汚染して接種された人たちに感染(膿瘍)が起こった事件が報告されています(参考文献2)。
多人数用の大きなビンに入ったワクチンは、何回も針で刺すことなどにより一度病原体で汚染してしまうと、接種された人に感染症を起こすことにもなりかねません。
一人用の小さなビンに入ったワクチンでは、ビンを何回も針で刺すことはありませんから、ビンを何回も針で刺すことによりワクチンが病原体で汚染してしまうことの心配はありません。
ワクチンを一人用の小さなビンに入った製品とすることで、チメロサール( thimerosal )のような保存剤をワクチンに添加しないですむ可能性が出てきます。
チメロサール( thimerosal )をワクチンにできるだけ添加しない方向の中では、ワクチンは一人用の小さなビンに入った製品が基本となって行くものと思われます。
ワクチン中のチメロサール( thimerosal )が、近頃、アメリカ合衆国で注目されるようになった一つの理由は、この十数年の間に、アメリカ合衆国では、乳幼児が接種すべきワクチンの種類や本数が増え、また、より月齢が低い段階で接種を受けるように成って来ていることによります。
アメリカ合衆国では、1988年には、乳幼児が受けるべきワクチンは、三種混合(ジフテリア・破傷風・百日咳)、ポリオ(経口)、新三種混合(流行性耳下腺炎・麻疹・風疹)、インフルエンザb型菌でした。
このうち、チメロサール( thimerosal )が添加されたワクチンは、三種混合(ジフテリア・破傷風・百日咳)とインフルエンザb型菌でした。
インフルエンザb型菌については、生後18ヶ月で1回のみの接種でした。1988年には、生後6ヶ月までで見ると、チメロサール( thimerosal )が添加されたワクチンは、三種混合(ジフテリア・破傷風・百日咳)を3回接種するだけでした。アメリカ合衆国では、1999年には、1988年に比較すると、予防接種としては、B型肝炎、ロタウイルス(現在は中止)、水痘が増加していました。
増加したものの中では、B型肝炎がチメロサール( thimerosal )が添加されたワクチンでした。
また、インフルエンザb型菌については、ワクチンの種類が変わりましたがやはりチメロサール( thimerosal )が添加されていて、生後2ヶ月から接種が始まり計4回接種するようになっていました。
1999年には、生後6ヶ月までで見ると、チメロサール( thimerosal )が添加されたワクチンは、B型肝炎、三種混合(ジフテリア・破傷風・百日咳)、インフルエンザb型菌をそれぞれ3回ずつ接種するようになっていました。
1999年には、生後6ヶ月までで見ると、チメロサール(thimerosal)が添加されたワクチンをそれぞれ3回ずつ受けたとすると、B型肝炎3回で37.5マイクログラム、三種混合(ジフテリア・破傷風・百日咳)3回で75.0マイクログラム、インフルエンザb型菌3回で75.0マイクログラム、計187.5マイクログラムの水銀(計375.0マイクログラムのチメロサール)が注射されたことになります。
現在は、アメリカ合衆国では、B型肝炎、三種混合(ジフテリア・破傷風・百日咳)、インフルエンザb型菌のワクチンについは、チメロサール( thimerosal )が添加されていないワクチンが生産されていますので、チメロサール( thimerosal )が添加されていないワクチンを注射すれば、同様の注射をしても、水銀は注射されないことになります。