魚の水銀汚染 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・財団法人政治経済研究所 小野塚春吉
 一般集団(普通の消費者)において、妊娠可能年齢(15歳~49歳)女性の25%が、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会)によるメチル水銀のPTWI(暫定耐容週間摂取量)1.6μg/kg体重/週を超えてメチル水銀量を摂取していることが推定されています。 

また、和歌山県太地町(小型沿岸捕鯨の町)における毛髪調査では、妊娠可能年齢女性の16%が、胎児への影響発現レベルの下限値とされるメチル水銀量を摂取していることが推定されました。

さらに、太地町では、成人の神経症状発現レベルの下限値とされる毛髪水銀50μg/g を超える人もおりました。

 このような事態が引き起こされているということは、日本の現在における水銀・メチル水銀の「リスク管理」が有効でないか、あるいは欠陥があることを提起しており、速やかな検討と是正措置が求められていると考えます。

魚類および鯨類の水銀濃度レベル 魚介類の有害物質は、食物連鎖による生物濃縮により高次捕食性動物へと濃縮されていきますので、「肉食」で、「大型」で、「長生き」する魚介類の濃度が高くなっていきます。

 厚生労働省は、国・自治体・研究機関などで得られたデータを整理して「魚介類に含まれる水銀の調査結果(まとめ)」を公表しています。

 ハクジラ類は、ことごとく暫定的規制値0.4μg/g を大きく超えています。オキゴンドウは暫定規制値の約100倍の濃度です。
日本人の水銀摂取レベル
(1)国立水俣病総合研究センター(国水研)基礎研究部の安武彰生化学室長らは、日本各地から多数の毛髪を採取し水銀濃度を分析しています。

2004年に発表した論文によると、毛髪水銀濃度から水銀摂取量を求める換算式を用いて計算した結果、女性の31%、妊娠可能年齢女性の25%、男性の57%が、JECFAによるメチル水銀のPTWI 1.6μgkg体重/週を超えて摂取していることが推定されています。
(2)和歌山県太地町は、伝統的な小型沿岸捕鯨の町で、イルカ肉も多く消費されています。

同町の要請で国水研が町民の毛髪検査を行い、2010年5月9日に結果を発表しました。

①毛髪水銀濃度2.8μg/g は、食品安全委員会が2005年に設定したTWI(耐容週間摂取量)2.0μg/kg体重/週に相当するものです。

妊娠可能年齢女性の74%がTWIを超え摂取していることになります。

②毛髪水銀濃度11μg/g は、食品安全委員会がTWIを設定する際に用いた無作用量(有害な影響を示さない最大値)に相当するもので、妊娠可能年齢女性の16%がこれを超えています。

③毛髪水銀濃度50μg/g は、神経障害の初期症状が出始める可能性のある濃度です。男性6%、女性1%がこれを超えています。

なお、最近では50μg/g より低くとも影響が出現する場があると指摘する研究者もおります。

 太地町の状況は、水俣病の初期症状の人が「存在してもおかしくない」レベルであり、また胎児への影響は「十分警戒すべき」レベルにあるものと考えられます。

魚介類中水銀の「リスク管理」の現状と問題点 魚介類に対する水銀の規制値は、総水銀0.4μg/g、メチル水銀0.3μg/g に設定されています。しかし、この規制値は法律に基づくものではなく、厚生省通知による「行政指導指針」であり、法的強制力を伴いません。

さらに、マグロ・カジキ、サメなど水銀濃度の高いものは、ことごとく「適用除外」になっています。また、クジラ・イルカは“魚介類” ではなく“哺乳類” のためか規制の「対象外」になっています。

このため、基準値を大幅に超える水産物が現在も流通・販売されています。これらマグロやクジラを除外する合理的理由は見当たりませんので、速やかに、例外なく、すべての食品を対象に、法に基づき規制の網をかけるべきであろうと思います。

 上記(規制値設定による流通制限方式)とは別に、厚生労働省により「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」が公表されています。

しかし、この「摂食注意事項」は、①国民に知られていない(周知が不十分)、②対象魚種が不十分、③高濃度汚染魚種の扱いが不適当などの問題点をもっており、の機能はほとんど果たされていない状況にあります。

実効性があるように改善が必要と思います。