・会議では、UNEPが用意した条約骨子案にそって、水銀含有製品の使用削減、発生源の特定、環境上適正な保管方法、水銀鉱山からの採掘禁止、余剰水銀の輸出禁止、大気・水・土壌への放出を削減すること、汚染サイトの修復、水銀の使用・排出インベントリーの作成、代替技術利用のための資金や技術支援の方法などの内容について、各国が意見を述べました。
水銀輸出禁止で、長期保管の必要性あり
石炭火力発電の比率が高い中国とインドは、条約加盟各国が水銀使用・排出インベントリーを作成し、2020年に向けた削減行動計画の策定に反対意見を述べました。
ブラジル、フィリピンなど多くの途上国で行われている小規模金採掘での水銀使用は、環境中に容易に水銀が排出され、健康被害も出ているため、水銀の使用を削減していくことが議論されました。
水俣病を引き起こした日本は、塩化ビニール工業による水銀不使用や電池、体温計などの水銀フリー化(水銀不使用)を世界に先駆けて実施し、水銀の使用量を削減してきました。
日本では、非鉄金属精錬等で回収したり、蛍光灯・電池などの廃棄物から回収したりして、年間100トン程度の余剰水銀が発生しており、途上国等に水銀を輸出しています。
今回の条約では、「水銀の輸出は適正な保有目的や締約国が認めた場合に限り、輸入同意書をとった上で認める」と水銀の輸出を制限することが提案されています。
水銀の輸出規制が行われるようになると、日本政府は、これまで輸出してきた水銀を国内で長期保管する方法を検討する必要性に迫られています。
次回の第3回会合は今年10月31日からワガドゥグー(ブルキナファソ)又はナイロビ(ケニア)で開かれる予定です。
世界各国からNGOが約100名参加 水銀使用削減と輸出禁止を求める市民の声を代表して、ZMWG(Zero Mercury Working Group)という国際的なNGOのネットワークが活動しており、今回の会議にも大勢参加していました。
また、国民会議も参加しているIPEN(POPs 廃絶国際ネットワーク)も重金属グループを中心に、各国からNGOが多数参加していました。
日本政府が「水俣条約」と命名する提案を行っていることに関しては、水俣病被害者への補償が不十分な中で、水俣条約と名付けるのはおかしいと、水俣病被害者団体から共同声明が松本環境大臣あてに直接手渡されました。
水俣病被害を教訓化するために、日本政府主催のサイドイベントで水俣、新潟水俣病の語り部が経験を話されましたが、フロアで行われたユージン・スミスとアイリーン・スミスのミニ写真展や、化学物質問題市民研究会およびEEB主催/IPEN協力のサイドイベントでは、1972年のストックホルム国際会議に出席した胎児性水俣病患者の坂本しのぶさんがあいさつされ、被害者の声の重みに多くの参加者が感銘を受けたようです。