・2.2 ナノ製品に表示義務を求める世界の声
現在までのところ、世界中でナノ製品に表示を義務付けている国はありません。
そのため消費者はナノ製品に関して情報に基づいた選択をすることができません。
この点について世界中の多くのNGOsや労働組合、さらには欧州議会も、ナノ製品に表示を義務付けることを求めています。
(1) 国際技術評価センター・国際NGO連合 共同声明(2007年1月)[4]
"公衆の知る権利に知らされる権利も含まれているのは、公衆が知識に基づいた選択をするためである。
世論調査によれば、公衆の大半はナノ技術や消費者製品中のナノ物質の存在に関する基本情報さえ持っていない。
多くの場合、製造者は製品の健康被害やテストに関する情報を公開しておらず、ナノ物質を含む製品にラベル表示をすることすらしていない。
その結果、公衆はナノ物質製品に関して知識に基づいた選択をすることができなくなっている。
ナノ物質材料を含む全ての製品にラベル表示をすることは、公衆の知る権利によって求められている。さらに、製品にラベル表示をすることにより、環境放出の可能性やヒト暴露、悪影響の説明責任を文書化することが促進される"。
(2) 欧州労連(ETUC)ナノ技術とナノ物質に関する決議(2008年6月)[5]
"欧州労連(ETUC)は、消費者もまた製品中に何が含まれているのかを知る権利があると信じる。
多くの場合、ナノ技術製品に対してなされたテスト及びそれらの健康への危険性に関する情報は公開されておらず、又は消費者製品にナノ物質が含まれていることが表示されていない。
完全に情報が与えられなければ、公衆はそのような製品の購入や使用について情報に基づいた決定をすることができない"。
(3) 欧州議会プレスリリース(2009年4月24日)[6]
"議会は、消費者製品中のナノ物質の使用に関する消費者への情報の提供の要求を繰り返す。実質的ナノ物質、混合物またはナノ粒子の形状で存在する全ての成分は製品のラベルにはっきりと表示されるべきである。
例えば、成分リストの中でそのような成分の名前はかっこをつけて(nano)と表示する"。
(4) 欧州連合の化粧品の上市と安全に関する新たな規則(2009年11月20日) [7]
欧州連合では2009年11月20日に化粧品に関する規則(EC)が採択され、 ナノ表示を求めるこの規則は2013年7月11日の発効することになりました。
2009年11月24日のEurActivの記事[8]によれば、欧州連合は2009年11月20日、既存の55の指令を一本の規則にした化粧品の上市と安全に関する新たな規則を採択したとしています。
新たに統合された規則の主要な要素のひとつは、サイズが100ナノメートル以下のどのような成分についても括弧の中に"ナノ"という言葉を表示するよう会社に求める条項であり、ナノ物質の形状で存在する全ての成分は成分リスト中に明確に示されなくてはならないとしています。
ナノ物質の定義は、"外部の1次元又はそれ以上の次元、又は内部構造が1~100ナノメートルである非溶解性又は生物残留性があり、意図的に製造された物質"であると明示しました。
(5)欧州議会環境委員会プレスリリース(2010年3月16日)[9]
欧州議会環境委員会は2010年3月16日に食品のラベル表示に関する新たな提案を採択しましたが、その中で、”ナノ物質は表示されなくてはならない”とし、”ナノ物質を含む製品は、成分リストに”nano”という表記を使って明確に表示されること”を求めています。
この環境委員会の提案は本年5月に議会の第一読会にかけられた後に、理事会にあげられる予定とのことです。
(6) 米下院議員 安全化粧品法案2010((H.R. 5786)を議会に提出(2010年7月20日)[9-1]
2010年、7月20日、米下院議員ジャニス・シャコウスキー(民主党-イリノイ州)は安全化粧品法案2010(H.R. 5786)を議会に提出しました。
これは化粧品の安全使用を確実にするために、連邦食品医薬品化粧品法(FFDCA)を修正することを提案するものです。
化粧品と成分の記述に関しては、この法案は製造者に対し、”全てのナノスケール化粧品成分の粒子サイズ及び化粧品ラベル又は説明書に示される成分リスト”を含む情報からなる電子情報を提出することを求めています。
この法案はまた、FDA長官が下記を求めることができるとしています。
鉱物及びその他の微粒子成分は、化粧品中の成分の1%以上のものについて、ひとつ以上の次元が100nm以下なら、化粧品の成分ラベル又はリストに”nano-scale”と表示されるべきこと。
化粧品中の他の成分は、もしサイズ特有の有害特性を持つなら、化粧品成分ラベル又はリスト上にサイズ特有の情報を記載し明確に示されるべきこと。