(7)原子力は電気しかつくれないためにエネルギーの利用形態を電気に特化し、省エネルギーに逆行するとともに、電気が止まったら何もできない脆弱な社会をつくってしまう。
原子力は、他のエネルギー源と違って、電気の形にしてからでなくては利用できない。
原子力自動車も原子力ストーブも存在しないことは、周知の通りだ。
ところが電気は、発電をするときのロスがきわめて大きい。
最新の原発で発熱量の六五パーセント、火力では五〇パーセントが、温排水の形で捨てられるのだ。
そこで省エネルギーのためには、電気から別のエネルギー源に変えていくことが望ましい。
電気の形にしてしか使えない原子力は、省エネルギーに反するのである。
しかも、何でも電気に頼った社会は、その供給がとまったら何もできなくなる。それは、決して安心できる社会ではないだろう。
(8)原発では電力需要の変動に対応できないので、原発を増やせば調整用の他の電源も増やすことになり、ますます電力化をすすめることになる。
原発はこわいけれど、電気がとまってしまっては困るから、原発反対とも言えない――と思っている人は少なくないだろう。
日本でつくられる電気の三五パーセントは原発で発電しているなどと聞くと、それがなくなってしまったら大変だと、ついつい思ってしまう。
しかし、実は、原発が電力需要の三五パーセントをまかなっているというのは、原発が出力を調整できず、フル出力で動かしっぱなしにするしかないからだ。その陰でたくさんの火力や水力の発電所が、電気をつくらせてもらえずに遊んでいる。
電力の需要は、刻一刻と変化する。原発では、その変化に合わせて出力を変えられない。出力調整用には火力や水力の発電所が要ることになるわけだ。
そこで火力や水力の発電所がつくられる。
せっかくつくった発電所が遊んでばかりでは利益にならないから、電力需要を増やす営業活動が行なわれる。
電力業界では、これを「需要開拓」と呼んでいる。
(9)原発は事故で運転をとめることが多く、しかも出力が大きいため、電力供給の安定性を脅かす。
その対策として、低出力で運転しながら待機している火力発電所や揚水発電所を必要とする。
原発は一基あたりの出力がとても大きく、最近のものでは一四〇万キロワットにもなる。
そこで、事故で停止すると、そのぶんのマイナスも大きくなる。
さらに、事故によっては、当の事故を起こした原子炉の停止だけですまず、同じ原発にいくつかある全部の原子炉をいっせいに停止せざるをえなくなるという可能性がつきまとっている。
さらに、事故の大きさによっては、ほかの発電所も全部止めなくてはならないことだって、起こらないとは言いきれない。
原発が止まったら、すぐにその分の電気を補わなくてはならない。
そのときすぐに代わって発電をするために、低い出力で運転をしながら待機している火力発電所や、大きな水量を備えられる揚水発電所が必要とされることになる。
runより:正に今起きている事ですね。
人間は深刻にならない限り問題を無視する、の典型ですね。