・(3)原因製品別考察
1)装飾品
①主な報告事例
◎事例1【原因製品:イヤリング】
患者: 29歳 女性
症状: 受診の4日前よりイヤリングをつけたところ、耳介部が腫脹し浸出液が出現するようになった。
掻痒感あり。
以前もネックレス等で紅斑を認めたことがある。
障害の種類: アレルギー性接触皮膚炎
推定原因物質: ニッケル(パッチテスト結果:硫酸ニッケル(+++))
治療・処置: ステロイド剤外用
◎事例2【原因製品:イヤリングのゴム】
患者: 49歳 女性
症状: 受診の2年前よりイヤリングやピアスをすると両耳介部に掻痒性皮疹が出現した。受診時皮疹なし。
障害の種類: アレルギー性接触皮膚炎
推定原因物質: イヤリングのゴム(パッチテスト結果:Thiuram mix*(++),Mercapto mix*(++))
治療・処置: イヤリングの変更の指導
*:Thiuram mix、Mercapto mix:ゴムでアレルギーが疑われる症例に対して使用されるパッチテスト用の検体。
②考察
平成7年度における装飾品に関する報告件数は56件(20%)であり、前年度64件(20%)と同様であった(表3)。
性別・年齢別の報告件数では、20代女性が31件(55%)と最も多く、前年度(48%)と同様であったが、10代女性は5.3%であり、前年度(16%)より減少している。
原因製品別の内訳は、ネックレスが15件、ピアスが12件、イヤリングが12件、指輪が2件、これらの複数が原因と考えられるものが13件であり、その他の製品は2件であった。
障害の種類は、アレルギー性接触皮膚炎がその大半(95%)を占めた。
原因となった素材は、1例(イヤリングのクリップのゴム部)を除いてすべて金属であった。
金属が原因とされるもののうち、パッチテストを行っているものが30件報告されており、その中では、前年度同様、ニッケルが原因と考えられるものが最も多かった。
金属が汗に溶けて症状が発現すると考えられるので、防止策としては、汗を大量にかくような運動をする際には装飾品類をはずすことが望ましい。
特に、ピアスは耳たぶ等に穴を開けて装着するなど、装着方法が他の製品と異なり、表皮より深部と接触する可能性が高いため、アレルギー症状の発現などに対して、より一層注意が必要である。
また、症状が発現した場合には、専門医の診療を受けるとともに、原因製品の装着を避けることや、別の素材のものに変更することなどが必要である。
なお、パッチテストにおいて、チタンで陽性になった事例が1例あったが、この事例については被験物質中に含まれる他の物質に対する反応の可能性があることから、チタンとの因果関係は不明である。