・3.2 中長期的な対応~主に2020 年~2050 年を見込んでの対応
【要旨】地域分散型の自然エネルギーを中心とするエネルギー政策に転換すれば、短期的には震災復興経済の柱となるだけでなく、中長期的には自然エネルギーを2020 年に電力の20%・2050 年には100%を目指し、電力安定供給・エネルギー自給・温暖化対策の柱とする大胆かつ戦略的なエネルギーシフトができる。
短期的な電力需給に問題がないため、中長期的な電力需給をじっくりと考えることができる。
以下、原子力、(脱)化石燃料、そして主力の2つとなる省エネ・省電力と自然エネルギーについて、考察をする。
(1) 原子力の凍結と国民的議論
もともと日本の原子力発電所は老朽化が進んでおり、通常に想定される40 年寿命で見ても、今後、急激な減少期を迎える。それに、新増設の放棄(少なくとも中断)や地震で影響の受けた原子力発電所の廃止措置などで、一気に原子力発電所の設備容量の減少が進む見込みである(図3.3)。
図3.3:日本の原子力発電所の行方(震災前後) ※環境エネルギー政策研究所の推計による 図をクリックして拡大してご覧下さい
・ただし今回は、国民に甚大なる被害を及ぼした原子力の今後の開発のあり方については、エネルギー政策・原子力政策の当事者の人心を一新した上で、しっかりと国民的な議論をすることが不可欠となる。
それまでの間、最低限以下の措置が議論の前提となる。
① 核燃料サイクル開発の凍結
② 原子力発電所の新増設の凍結(建設中を含む)
③ 福島原発と同種の炉型かつ同水準の地震リスクのある原発の緊急停止(浜岡原発)
※現時点では新耐震基準に沿った安全審査が無効となっているため
(2) 脱化石燃料
ここ数年にわたる短期的な電力供給は、化石燃料主体となることは避けられない。
何よりも温暖化対策の問題が生じるほか、石油や石炭の高騰によるエネルギー供給リスクが懸念される。日本は、化石燃料の輸入に23 兆円・GDP の約5%もの費用を費やしている(図3.4)。図をクリックして拡大してご覧下さい
・しかも震災前から、中国の需要急増などが原因で、石炭の価格が高騰してきていたが、今回の震災を機に、世界的に原発回避の流れが生じつつあり、それはそのまま石炭需要の増加を意味することから、今後、石炭価格のいっそうの高騰が心配される。もとより、中東の政変を引き金とする石油価格も高騰してきている。
こうした事情から、電力需給を確保しながら、同時に脱石油・脱石炭を達成することを政策目標とする必要がある。