・(3) 戦略的な需給調整契約の活用
以上の需給を見る限り、この春から夏にかけて、非常に厳しい電力需給が続くことは確かだが、現状の自発的な省エネ・省電力の効果で、十分に切り抜けることができる水準であると言える。
ただし、確実な電力需給を行うために、次に示す戦略的な需給調整契約を活用することを提案したい。
需給調整契約とは、大口需要家との間で取り交わされている、逼迫時に電力会社が使用削減を要請できる契約を指す。
需給調整契約には、いつ使用制限を通告するかで3種類にわかれる。
① 通告後すぐに使用制限する「瞬時契約」(東電では昭和電工、旭硝子、神戸製鋼所、東京製鉄、東京鋼鉄、朝日工業、東邦亜鉛など23件契約)
② 使用制限1時間前までに通告する契約(同500件強契約)
③ 使用制限3時間前までに通告する契約(同700件強契約)
(東京電力ホームページより
http://www.costdown.co.jp/blog/2007/08/post_583.html
)
東京電力では、2007 年の柏崎刈羽原発が地震で停止したときに、17 年ぶりに活用した経験がある。
その際には、計画調整で約140万kW、随時調整:約130万kW、合計310 万kW もの需要調整力を確保している(東京電力ホームページよりhttp://www.tepco.co.jp/kk-np/nuclear/pdf/150714.pdf
)
今回は、供給力の回復と省エネ・節電努力を考慮すれば、既存の需給調整契約を活用するだけでほぼ十分と考えられるが、さらなる需要調整力を確保するために、政府が経済界と協定を結ぶとともに、省エネの報奨金をインセンティブで出すことも考えて良い。
たとえば、先行して需要削減に応じた企業は、その量に応じて何らかの補助を得られる仕組みだ。
そうした後押しによって自主的な契約だけの現状でも310万kW の需要調整力であるところを、控えめに見ても倍以上、おそらく1000 万kW 超の需要調整力に達することは見込めるのではないか。
以上より、今春から夏の需要ピーク時(1 日最大電力予想=発電端で5,755 万kW)にかけて、とくに需要側への適切な措置~とくに大口需要家との需給調整契約の戦略的活用~を行えば、短期的にも無計画な「計画停電」を実施しなくても、十分に対応可能であることが明らかになった。