「予防原則を学ぶ」2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・◆欧州では
 予防原則の手法としては、従来のリスクアセスメント(RA)を前提とするものと、リスクを生じさせないというものがあります。

私はRAが予防原則の中でどう使われているかを主に調べてきました。

2003年のWHOの公衆の健康保護のための予防的枠組みは、EUの精神とアメリカのリスクマネジメントの考え方の両方が入っています。
 欧州では1975年からドイツの大気汚染防止法や、スウェーデンの化学物質の法律で取り入れられていました。

EU全体としては1994年のマーストリヒト条約に取り入れられました。

2000年のEUのガイドラインでは、リスクアセスメント・リスクマネジメント・リスクコミュニケーションの枠組みの中に位置づけられて、可能な限り完全な科学的リスク評価から始めるとされています。
脅威が科学的には不確実だが存在するという時に、評価過程として予防的評価、拡大リスクアセスメント、推論的過程という手法が位置づけられています。このアセスメントにより、臭素化難燃剤は予防原則を適用して厳しく規制されることになりました。

ノニルフェノールは環境には悪いが対策がとられているので適用されず、ビスフェノールAも適用されない (注) ことになりました。
 リスクアセスメントには多くの不確実性があります。

実験室内で単一の種で行なう実験を、現実の生態系内に適用することなどです。

EUの健康リスクアセスメントでは、MOS(Margin of Safety=安全性の大きさ)を毒性値と摂取量から計算し、100以下であればマネジメントが必要であるとしています。

EUが臭素化難燃剤PBDEの中のPenta-BDEを規制したのは、母乳中から高濃度で検出されたためで、乳児への影響を考慮して使用禁止にしました。

この際はMOSが10000以上でも対策が必要とされました。

このように、リスクアセスメントに則れば、企業も納得させることができます。

  ◆アメリカでは
 アメリカ政府は、予防についてEUよりも消極的です。

アメリカでは1920年代にすでに鉛について予防原則的な議論が行なわれました。

1980年代に明確なリスクがない限り規制はできないという判決が出ました。

米国行政管理財政局長官のグラハムという人は、リスク管理において、EUとは多くの違いがあるが、予防の概念の合意は可能であると述べています。

必要性は認めつつ、予防は主観的で、貿易政策などで乱用されがちであるとしています。

アメリカとEUの食い違いによる対立例としては、家畜への成長促進剤のホルモン剤問題があります。

EUでは最初に禁止した際は、政治的なリスクアセスメントだったとしても、その後科学的に正当化されたとしています。
 1998年のウイングスプレッド会議声明では、リスクアセスメントによる方法では、健康や環境を守ることはできなかったとして、予防原則の適用を主張し、費用対効果は考慮しないという内容となっています。

その後の実施事例は見当たらないが、関連づけられるマサチューセッツ州法は1997年に、ウイングスプレッド会議の参加者が制定に関わって策定されました。

化学物質削減の目標を掲げて、5年間で化学物質を3分の1に削減するという成果を上げています。アメリカでは地方で連邦政府と異なった施策が行なわれています。


runより;リスクアセスメント (risk assessment) とは、リスクの大きさを評価し、そのリスクが許容できるか否かを決定する全体的なプロセスのことである。