環境ホルモン問題は今どうなっているのか2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・■ビスフェノールAとフタル酸の問題
 ビスフェノールAの低用量問題とは、毒性が非常に弱いといわれたビスフェノールAがごく少ない量で作用するということが、フォン・サールによって提起されたものです。

様々な追試によって、低用量でなんらかの作用が起こるということははっきりしてきました。

現在は、その作用が人に対して悪影響があるかどうかが、議論となっています。
 規制値を決める時に使う「無作用量」という言葉と、「無毒性量」という言葉があって、ここにグレーゾーンが存在します。

無毒性といっても、生化学的な反応の累積が、長い時間積み重なるとなんらかの有害性をもつのでは、という学者もいます。
 フタル酸エステルの生殖系への影響も、科学的知見は着実に蓄積されてきています。それをどう評価するのかというのが問題です。

フタル酸エステルは、毒性は低いのですが、大量に生産されて、環境中どこでも検出されますし、かなり多量に摂取する機会もあると思われます。

体内で分解して反男性ホルモン作用を示します。
 反男性ホルモン的な影響があるという疫学論文もでてきています。

疫学的結果は人への影響を直接みているという点で、無視すべきではない事態です。

ヨーロッパ議会は子ども用玩具への使用中止を決議しましたが、むしろ妊娠中の女性への規制の方が必要かもしれません。

フタル酸エステルについては、ちょうどアスベストの80年代の議論が思い出されます。
 私達はMRIで測れる脳の変化から環境ホルモンの作用を観察できないかという実験をしています。

脳梁という右脳・左脳を結びつける器官は、女性の方が発達しているので、脳の性分化をそれによって観察できないかという実験です。

■複合影響と合計評価、総量規制
 複合効果というのは、汚染物質についての現在の最大の課題の一つです。現在の政策は、無作用量をもとに上流にあたる発生源で規制していますが、規制値以下の物質が数十あったときに、それだけで下流部の受け手の人や野生生物は大丈夫かという危惧があります。

規制の仕組みが、受け手を中心に設定されていないのです。蓄積されてきている研究成果を見ると、例えば環境ホルモンのように、メカニズムが共通の物質は、合計で評価する必要はあると思います。

天然のホルモン物質の作用が90%あると、そこに人工のものを10%足すだけで、何かが起きる可能性があり、その場合、総量で規制する必要も出てきます。
 対策としては、東京都が子どもの健康影響を考えた鉛対策のガイドラインを作っています。

貿易がらみでは、欧州でプレイステーションが輸入禁止になったように、日本の企業が外圧型で自主規制をするよう迫られています。

■法的規制までには20年かかる?
 環境ホルモンの最近の動きの一つとして、臭素系難燃剤の体内蓄積や、フッ素系化合物の蓄積が問題となり、一部物質は使用中止や生産中止にいたりました。
 環境ホルモンの問題は、提起されて時間が経つにつれてマスコミにも登場しなくなり、市民の間で忘れられた感がありますが、現在の生命科学の最大課題の一つです。

発ガン性物質の問題が提起されてから、科学的知見が集積され、産業界も合意して、法的規制の枠組みができるまで20から25年かかったことを考えると、環境ホルモンも20年後には政策的に動いているでしょう。

政治状況によっては、もっと短縮するか、あるいはもっと時間がかかるかもしれません。

いずれにしても、科学的知見をしっかりと蓄積していく必要があります。環境省の姿勢も、担当者に左右されることもあります。