環境ホルモン問題は今どうなっているのか | 化学物質過敏症 runのブログ

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・出典;化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html

・ピコ通信/第94号
発行日 2006年6月28日
発行 化学物質問題市民研究会
e-mail syasuma@tc4.so-net.ne.jp
URL http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

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6/10環境ホルモン講演会&交流会開催
環境ホルモン問題は今どうなっているのか


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 6月10日、東京・豊島区"ECOとしま"において、当研究会主催の環境ホルモン講演会&購読者交流会を開きました。

環境ホルモン問題については、国もマスコミも、「環境ホルモン問題は終わった」かのような対応に変わってきています。
 「環境ホルモン問題は今どうなっているのか」をテーマに、環境ホルモン学会(正式名称 日本内分泌撹乱化学物質学会)会長の森田昌敏さんを講師にお招きしての講演会には100名近くの参加者があり、この問題は市民にとって決して"終わっていない"ことを実感しました。
 講演会に続く購読者交流会は初めての試みでしたが、30名近い参加者があり、各自が係わっている問題について話されました。
 今号では、森田さんの講演要旨を紹介します。

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環境ホルモン問題の現状と課題
日本内分泌撹乱化学物質学会会長 森田昌敏さん
(文責 化学物質問題市民研究会)


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■我々の社会の現状は?
 我々の社会がどうなっているのかという話から始めます。

1970年にローマクラブが出した「成長の限界」で、資源エネルギーの枯渇、人口増と食料供給不足、そして環境汚染が加わって、2050年に人類は破局点に至ると予測されたことは、多少の時間の幅はあっても、ほぼその通りに進んでいます。

最大の課題である地球温暖化への対策にしても、エネルギー資源の転換を行えば、それが別の問題を引き起こす可能性もあります。

地球の総人口はまだ増大していますが、一方で日本を含む多くの先進国や中進国で、再生産力が極端に低くなってきています。

その原因の一つとして環境ホルモン問題が提起されていると思われます。
 人的資源の問題は、人口だけでなく、知能の低下という問題もあります。

アメリカで環境ホルモン問題の主要な関心は、知能の発達への影響という側面におかれています。

知能の低下は、社会的負担の増大や、国力の低下を招きます。

ある種の汚染物質が知能発達に影響することは分かっていますが、それと現在私達の社会に起きている現象との関連はまだ科学的には明らかになっていません。
 化学物質汚染の問題は、古くからのものと、新しいものがあります。

重金属のような古くから問題とされたものも、新しい見地から見直しが必要となっています。

発ガン物質についても、もっと厳しく考えなければならなくなっています。

新しい汚染としては、環境ホルモン、その他の有機ハロゲン系化合物、ナノテク材料、新しい金属(レアメタル)、農薬の非農薬的使用(家庭内など)などが挙げられます。

自動車では、ディーゼル排ガスのナノ粒子の作用が問題となっています。

ブレーキのアスベストは、90年代半ばに切り替えられました。
 化学物質に関わる法律体系は各省庁にまたがって膨大なものですが、発生源サイド(生産サイド)からみてコントロールする傾向が強く、日常生活の中で総体として化学物質を受けている側からみて不十分ではないかという気がします。

それぞれの役所が規制値を決めても、受けて側の人から見た安全が完全には担保されていない可能性があります。

例えば、一つの農薬の基準が守られていても、人は総体として何百もの物質を浴びているという現実の中で、果たして大丈夫なのかという危惧が残ります。

■科学的予見には限界
 1970年代前半に『沈黙の春』や『複合汚染』、公害問題に代表される第一次化学物質ブームがありました。このときに現在の環境関連法規の原型ができましたが、先送りされた課題があって、それが現在の問題として顕在化しています。第二期は1990年代から2000年代初にかけてです。

発ガン性物質は前進をみたのですが、ダイオキシン、環境ホルモン問題が出てきました。子どもの健康、複合汚染効果、化学物質過敏症などの新たな疾病などの課題が残されています。
 化学物質の総数は2,470万種で、年150万種が増えています。産業利用されているのは10万種で、年1,500種の増加です。

そのうち規制されているのは数千だけで、問題となる物質はその十倍はあります。
 被害が起きてから規制するというのではなく、予防的に対策をとるには、汚染が警戒レベルを超えた段階で対策をとるのがいいのですが、警戒レベルの線をどこに引くかは、安全を強く求める側と、生産者などのコストや利益/損失などとのせめぎあいとなります。
 化学物質問題は、それを便利に使っている私達の生活の反映として根本的対策がとれず、常に問題であり続けます。リスクの科学が未成熟で、危険を予知できないことに問題があります。

安全性や有害性の科学的証明というのは永遠の課題です。科学的予見に限界があるなかで、予防原則をどのように運営できるか、どこかで政策的判断をしなければなりません。
 アスベスト対策では、中皮腫は全部救済の対象となっていますが、中皮腫にしてもどれくらいがアスベスト由来かは、科学的には分かっていません。

政治的判断による対策です。肺ガンは、アスベストが原因であるかどうかは、判断が困難であり、救済を求めることは容易ではありません。

■環境ホルモンの悪影響
 環境ホルモンは、生殖系、脳神経系、免疫系に悪影響を与えます。

脳神経系には、脳の性分化や知能の発達の遅れに影響しています。

環境省のSPEED'98では、『奪われし未来』やWWFのリストをベースにリストアップしました。分類すると、有機塩素系(POPs物質が多い)、芳香族工業化化合物、農薬(殺虫剤系が多い)、重金属、その他、などになります。
 環境影響の例として、有機スズによるイボニシ貝のインポセックスを挙げます。

いくつかの貝類の生産が落ち込んでいます。

鉛の毒性も、子どもの知能への影響から再評価されています。PCBによって鳥の卵の殻ができなくなることも実験から確かめられ、産卵機能が低下することも明らかになっています。
 人の出生力低下は、主要には女性の晩婚化があり、それに加えて多様な原因が考えられます。

不妊カップルは、以前は10組に1組だったのに対し、最近は7組に1組に増えています。

性比については、セベソのダイオキシン汚染では、女児の割合が増加しました。

ビスフェノールAを取り扱う職場の労働者の子供に女児が多いというので調べましたが、統計的に有意といえるだけの数の事例が集まりませんでした。

メカニズムは簡単には分からないとしても、このような統計だけでもきちんと調べる必要があります。