・疫学
ハンセン病は、人獣共通感染症でも知られるが、自然動物ではヒト、霊長類(マンガベイマンキー)とココノオビアルマジロ以外に感染する動物は見つかっていない。
以下、ヒトの感染状況について説明する。
世界
2008年初頭の登録患者数(治療中の患者)は218,605人、2007年の新規患者数(年間罹患者数)は258,133人である。
登録患者数は一定の治療を終えた患者は治癒の有無に問わず、登録から除外されている。
そのため年次報告の性質上、年内に治療が完了すると登録者から除外されるため、新規患者数(年間罹患者数)は登録患者数を上回る。
MBでは1年でなく2年以上で治療しているので例外がある。
また注意点としては、ハンセン病と発見できて適切に治療している人数のみをカウントしているため、ハンセン病が発見できず治療されていない患者も相当存在する可能性もあることが挙げられる。
Table 1に地域別の 2008年初頭の登録患者数、2001?2007年の新規患者数の動向を示した。
新規患者数は年々、明確に減少していることが分かる。
2005年と前年とを比較すると110,000件余(27%)減少している。
Table 2には2007年の国家別新規患者数で患者数が1,000人以上の国家を降順にリストアップした。
2007年現在、インドが最も新規患者数が多くなっている。
世界保健機関|WHOによるハンセン病制圧の定義は、1991年5月に開催された第44回世界保健総会で決定され、人口100万人以上の国で、登録患者数が人口1万人あたり1人を下回る(有病率が1.0を下回る)こととされた。
この定義を遵守すると日本では1970年前後に制圧を達成している。
2005年初頭はインド・ブラジル・コンゴ民主共和国・アンゴラ・モザンビーク・ネパール・タンザニア・中央アフリカの9カ国が未制圧国であったが、2006年初頭にインド・アンゴラ・中央アフリカが、2007年初頭にマダガスカルとタンザニアが、2007年末にコンゴ民主共和国とモザンビークが制圧を達成した。
現在の未制圧国はブラジル・ネパールと、東ティモールが新たに加わり3カ国となっている。
東ティモールは以前より有病率が1.0を超えていたが、人口100万人未満であったために定義より除外されていた。
しかし、近年の人口増加により人口100万人を突破したために新たに2008年より加わった。
Table 3には未制圧国のブラジル・ネパール・東ティモール、最近まで未制圧国であったモザンビーク・コンゴ民主共和国・タンザニア・マダガスカル・インドの登録患者数と新規患者数の最近の動向をまとめた。
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(補足)a)制圧とは人口10,000当たり1件以下の患者数であること。
b)マダガスカルは2006年9月に国家レベルでハンセン病を制圧した。
c)ネパールは統計期間が異なり2004年11月中旬?2004年11月中旬である。
d)コンゴは2008年に2007年末をもって制圧に達したとWHOに公式に報告している。
ハンセン病は全世界にみられるが、分布は一様でない。
度々、流行も生じる。
代表的な流行としては、1850 - 1920年のノルウェーでの流行・1920年代のナウル島での流行・1980年代のカピンガマランギ島での流行がある。
流行の原因について多種多様な検討も行われているが、実際には明確になっていない。
男女比に関しては、新しく患者が発生する時代を検討すると全世界を通じて男性が女性より多い。
男性は小児期から活動的であり、感染しやすいと言われているが、明確には原因が分かっていない。
ただし日本の全国の療養所では、一般的に男性の方が女性より寿命が短いので、男性:女性の比はほとんど同じまたは逆転している。
貧困層と富裕層の比較に関しては、インドの検討であるが、貧困層に発症率が高い。
ハンセン病患者は、亜鉛、カルシウム、マグネシウムが正常の人に比べて著しく低値であった。