公害紛争処理制度の今後の課題4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・3 公害紛争処理制度の今後の課題
1)公調委は、この制度の特色を発揮し、迅速かつ柔軟な手続運営を軸として、当事者にとって困
難な因果関係の立証などにおいて積極的に職権調査を尽くし、専門委員を活用して、科学的・専門的で、公正かつ適正な判断を尽くして事件処理を進めることこそが、今後への基本的な課題である。

これによって、制度に対する国民の信頼を確保していきたいと思う。

近時の公害紛争は、近隣紛争に根ざした事件も少なくないが、公調委は、裁定事件としてこれらの事件を扱っている。

そして、規模の小さい事件であっても公害問題としての困難さを含んでおり、職権調査等により当事者の立証の負担を軽減させる必要が少なくない。

同時に、規模の大きい複雑困難な事件を迅速かつ適正に解決を図る役割もある。

公調委は、類型の異なる事件に、それぞれきちんと対処する役割を果たしていきたい。
2)この本来の使命を果たしていくためには、まずもって、住民に制度を利用していただくことが前提になる。

引き続き「身近で利用しやすい制度」を目指して、多角的な広報活動に努めていく必要がある。

その上で、都道府県の公害審査会等と連携し、各地の公害審査会等で処理困難な事案については、事件の引継制度を利用していただく、あるいは調停係属中に原因裁定の申立てをしていただく等の方法で、必要な協力をしていきたい。

また、市区町村の公害苦情相談の案件であっても、苦情処理では解決困難な事案については都道府県の公害審査会や公調委における公害紛争処理手続を当事者に紹介していただき、事件の申立てを促していただきたい。

公調委は、地方に在住する当事者の利便を図るため、現地期日・現地調査を活用し、これらの需要に応えていきたい。

公調委は、公害紛争処理制度を担う各機関の連携の要になって、制度全体の活性化に努めていく所存である。
3)公調委は、近年の公害紛争の多様化に対応するため、不断に公害問題に関する調査研究を進め、多数の事例を分析・検討している。

これまで、各地の公害紛争事例の分析、公害苦情事例の集計・解析に努めてきたが、引き続きその役割を果たしていきたい。

また、公害問題の基礎調査として、土壌汚染対策問題、水質汚濁による漁業被害問題、アスベストによる健康被害問題、低周波音被害問題、化学物質過敏症に関する問題などについての報告書を出してきた。

今後とも、新たな公害問題に対処するため、必要な調査研究を進めていくことは我々の大切な課題であると認識している。

そこから得られた情報・資料については、随時、各地の審査会等や公害苦情相談担当機関に提供していきたい。
4)また、環境問題が地球規模の課題として広がりを見せる中で、環境・公害紛争処理制度の在り方も国際的な関心事になっている。

公調委は、平成19年、国連環境計画(UNEP)が開催した国際会議に参加し、我が国の公害紛争処理制度について報告した。

この報告がきっかけとなって、その翌20年、インドネシアやフィリッピンで開催された国際セミナーで同様に我が国における公害紛争ADRを紹介した。

平成21年には、韓国の中央環境紛争調整委員会との定期交流が始まり、また、ベトナムで開催されたワークショップにも参加した。

我が国の公害紛争処理制度は、歴史的に事例が豊富であり、ADRとしての制度的特色も先進的である。

公害が多発しているアジア各国にとって、日本の経験の紹介は大きな援になるものであり、また、我が国の制度の見直しにも有益である。

このような国際交流事業は、今後とも、継続していく必要がある。
4 まとめ
平成23年を迎えるに当たり、公害紛争処理制度の沿革を振り返りつつ、現在の到達点及び今後の課題を指摘してみた。

今後とも、各地の公害審査会等及び公害苦情相談担当機関の業務の改善を支援しつつ、制度の更なる活性化に努めてまいりたい。