水俣病2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・臨床所見
おもな症状
水俣病はメチル水銀による中毒性中枢神経疾患であり、その主要な症状としては、四肢末端優位の感覚障害、運動失調、求心性視野狭窄、聴力障害、平衡感覚#平衡機能障害|平衡機能障害、言語障害、振戦(手足の震え)等がある。
患者には重症例から軽症例まで多様な形態が見られ、症状が重篤なときは、狂騒状態から意識不明をきたしたり、さらには死亡したりする場合もある。
一方、比較的軽症の場合には、頭痛、疲労感、味覚・嗅覚の異常、耳鳴りなども見られる。

メチル水銀で汚染されていた時期にその海域・流域で捕獲された魚介類をある程度の頻度で摂食していた場合は、上記症状があればメチル水銀の影響の可能性が考えられる。
典型的な水俣病の重症例では、まず口のまわりや手足がしびれ、やがて言語障害、歩行障害、求心性視野狭窄、難聴などの症状が現れ、それが徐々に悪化して歩行困難などに至ることが多い。
これらは、メチル水銀により脳・神経細胞が破壊された結果であるが、血管、臓器、その他組織等にも作用してその機能に影響を及ぼす可能性も指摘されている。
また、胎盤を通じて胎児の段階でメチル水銀に侵された胎児性水俣病も存在する。

上記のうち、いくつかの症状が同時に現れるものもあるが、軽度の場合には、臨床症状だけでほかの病気と識別診断するのは一般に困難である。
このような様々な症状の程度は、一般にメチル水銀の曝露量に依存すると考えられるが、メチル水銀は既に体内に残留していないため、過去にさかのぼって曝露量を推定することは困難である。
発症後急激に症状が悪化し、激しい痙攣や神経症状を呈した末に死亡する劇症型は、高濃度汚染時期に大量のメチル水銀を摂取し続けたものに見られる。
この臨床症状は典型的な水銀中毒|メチル水銀中毒であるハンター・ラッセル症候群(有機水銀を使用する労働者に見られた有機水銀中毒症)とよく一致し、これが水俣病原因物質究明の決め手となった。
劇症型には至らないレベルのメチル水銀に一定期間曝露した場合には、軽度の水俣病や、慢性型の水俣病を発症する可能性がある。

一方、長らくの間、ハンター・ラッセル症候群という水俣病患者中最も重篤な患者、いわば「頂点」に水俣病像を限定してしまい、その「中腹」「すそ野」である慢性型や軽症例を見逃す結果を招いてしまったとの批判がある。
人体では、メチル水銀自体は比較的排泄されやすい化学物質の一つであるが、中枢神経系などに入り込みやすく、胎盤を通過しやすいという化学的な性質を有しており、その毒性作用は神経細胞に生じた障害によるものである。
いったん生じた脳・神経細胞の障害の多くは不可逆的であり、完全な回復は今のところ望めないが、リハビリによりある程度症状が回復した例は多数存在する。
一方で、若い頃に健康であった者が、加齢にともなう体力低下などにより水俣病が顕在化する場合も考えられる。

重症例はもちろん、軽症であっても、感覚障害のため日常生活に様々な支障が出てしまう。
例えば、細かい作業が出来ず、あるいは作業のスピードが落ちる。
怪我をしても気付かず、傷口が広がったり菌が侵入する原因となる。
こうしたことから、「危なくて雇えない」などと言われ、職を失ったとする証言は判決文や出版物中に複数存在する。
水俣病公式発見前後、劇症型の激しい症状は、「奇病」「伝染病」などといった差別の対象となった。
こうした差別のため、劇症型以外の患者が名乗り出にくい雰囲気が生まれ、熊本大学研究班に送られてくる症例は劇症患者ないしそれに近いものだけとなり、ますます水俣病像 = ハンター・ラッセル症候群という固定観念が強くなってしまった。