・セルフケア
抗原の回避と除去
花粉症の症状はアレルゲンと接触したときにのみ現れるので、それを防ぎさえすれば症状は現れない。
このため花粉との接触を断つことがもっとも効果的な対策である。
治療としてみた場合、アレルギーの原因にさかのぼって対処するため、原因療法といわれることもある。
症状が出てから対策を行うのではなく、症状が出る前から予防的にケアを開始するとより有効である。
すなわち自分で行う初期治療である。
このような対策によりアレルゲンとの接触をできるだけ避け続けていれば、年を経るごとに抗体値がだんだんと下がっていくことが期待される。
接触を続けていれば抗体値も上がり、症状もひどくなる。
すなわち、薬剤治療により症状を抑えているからといって、なんの対策もしなくてよいということにはならない。
患者にとっては、こうしたセルフケアはもっとも基本的なことといえる。
•花粉症の症状は目や鼻で強く現れるため、外出時にゴーグルやマスクを着用すると効果的である。
マスクの質よりもつけかたが問題であり、すきまを作らないことが肝要である。
ゴーグルほどの目の保護機能がなくとも、いわゆるだてメガネでも有効であることが実験によって示されている。
特にマスクにおいては、スギ花粉症のシーズン特有の乾燥や低温から鼻粘膜を保護することにもなり、シーズン前から(発症前から)の着用が推奨される。
•室内に花粉を持ち込まないよう、花粉の付着しにくい上着を着用したり、帰宅時に玄関の外で花粉を落としてから入室するなどの対策も有効である。
換気などのために窓を開けることはもちろん、洗濯物や布団などを屋外に干すことも避けるべきである。
干す場合は取り込むときによくはたく、ブラシではらう、または掃除機で吸い取ることが推奨されている。
同居の家族にも協力してもらったほうがよい。
しかし、どうしても花粉は屋内に侵入してくるので、掃除も有効な対策となる。
床の花粉を舞い上げないよう、掃除機ではなく濡れぞうきんによる拭き掃除が推奨されている。
•室内に浮遊している花粉を除去する空気清浄機や、清浄機能のあるエアコンを使用するのもよい。
空気清浄機は風量の豊富なものを選択し、花粉が落下する前に吸い取ることを考えるべきであり、装置の自動運転を過信しないことが大事である。
加湿器も、浮遊している花粉を湿らせて重くし、落下を早めるために有効とされる。
湿度を高めることは鼻や喉の粘膜のためにもよい。
ただし湿度を上げすぎるとダニやカビの問題が出てくる。
一般に湿度50%程度が適当といわれる。
加湿器がない場合、ぬれたタオルなどを室内干しするのも効果がある。
•地域によっては花粉の飛散量が少ないため、花粉症の症状が現れないところもある。
スギに関していえば、沖縄諸島や奄美群島、小笠原諸島、札幌以北の北海道がこの例に当たる。
こうしたところに転地療養として旅行するのもよい。
ただし、旅行中に症状が出なくとも、シーズン全体を通しての症状にどれだけ好影響があるかは不明である。
スギは日本および中国の一部にしかないのでこの時期の日本国外への旅行もよい。
ただし、ヒノキ科の針葉樹は日本国外にもあり、それが花粉を飛ばしている地域では、スギ花粉症患者でも症状が起こる可能性がある。
•地域により花粉飛散量が多い時間なども異なる。
近年広く提供されるようになったリアルタイムデータやシミュレーション予報などを参考に、外出時間や窓を開けての掃除をする時間等を考慮するのもよい。
一般に夜間~早朝が少ないといわれるが、必ずしも当てはまらないこともある。
天候によっても飛散量は異なり、晴れて気温が高く、湿度の低い風のある日が花粉が多い。
雨の日であれば飛散量は少ないかゼロである。
ただし、原因は不明であるが、必ずしも雨のほうが楽だという患者ばかりではない(その場合、血管運動性鼻炎が合併しているのであろうとの見方もある)。
雨の日の翌日に晴れると、2日分の花粉が飛ぶといわれるので要注意である。
•原因植物自体を排除することも、自宅の庭に生えたキク科やイネ科の植物などがアレルゲンになっている場合には有効である。
河川敷や公園などの植物が原因と考えられる場合は、管理者である自治体などに相談するとよい。