・○塩田 新聞やマスコミばかりでなく、インターネットやメール等により、あらゆる方向からこれらの情報が、ともすると適切さを欠いて乱れ飛んでいる状況もあります。
当事者間の不調により、一方的な言動が垣間見られたり、知識不足や理解不足により、低周波音に対する正しい認識まで至っていない現状があります。
また、電磁波と混同したような図書も発売されているなど、情報は、至る所に存在しております。
私たち専門家としても、正しい情報発信が、迅速に、低周波問題を解決するために必要と感じております。
お互いに、しっかりと低周波音を理解することが重要と思っております。
○荒井 確かに、環境省の発表では、低周波音苦情の件数は、15年度の94件から16年度は144件に増大しており、「参照値」が16年6月に発表されたこととの関連性が考えられるようです。
○楊井 実際に測定をして、低周波音の影響はどうだったのですか。
○落合 実際、清瀬・新座の事件は低周波音よりも騒音の要素が強かったような感じもしました。
低周波音といっても100ヘルツぐらいですが、住民の方は夜、周りが大変静かになったときに、不快感を感じられたのだと思います。
清瀬・新座の事件の場合、発生源周辺の幾つかの家屋でその中の何人かが苦情を訴えており、現地へ行く前の段階で、低周波音が出ている可能性があると思いました。
実際は、騒音と低周波音の両方が問題でした。実際にファンが稼働しているキーンとかビーンという音も聞こえるという話をしておりましたので、その中に低い音も混ざっていました。
最近のアルミサッシは遮音性能が良いので、窓を閉めると、高い周波数と中位の周波数の騒音のレベルがものすごく下がります。
そうすると今まで高い周波数の音が気になっていたのが、低い周波数の音だけ残ってしまう。
窓を開けるとビーンというような高い音が聞こえますけれども、窓を閉めて、部屋の中で例えば夜寝るときには低い方だけこもって嫌な感じがする。
嫌な感じがするから、今日はあの音はしていないのかどうかを意識して聞いてしまう。そうすると余計また気になるという悪循環だと思います。
【深川の事件】
○楊井 清瀬・新座の事件では紛争解決に際し、いろいろ新しい試みもなされ大きな成果が得られたのだと思います。
そのほかに印象に残った事件はありますか。
○落合 深川の事件は、スーパーマーケットの外に置かれた室外機からの低周波音被害が問題となった事件です。
この事件は、被害者は隣接する住宅の居住者だけです。
この事件でも、清瀬・新座の事件と同じように、機械の運転と被害者の反応との対応関係を調べましたが、両者の間に明確な対応関係がみられませんでした。
その苦情者は、以前にある低周波音問題に関わっている方からのアドバイスにより、25ヘルツの低周波音が問題だと思っていたようです。
実際に測ってみると苦情者の反応は25ヘルツの低周波音に対応していなかったのです。
公調委も、発生源側と被害者側で観測された25ヘルツの時間的な対応関係について、コンサルタントに測定結果をさらに詳細に解析してもらいましたが、結局、両者の対応関係はみられませんでした。
苦情者が一番感じるといっていた部屋でも測定しましたが、対応関係はみられませんでした。
25ヘルツについては、3階建の建物の2階の部屋だけ他の階より大きなレベルが観測されました。
多分何か外からほかの音が入ると、部屋の大きさによって特定の周波数の低周波音が励起される現象(定在波)が起きていたのではないかと思います。
○針塚 低周波音が大きくなった結果として、感覚閾値を超えていたのですか。
○落合 いいえ、25ヘルツは最大でも感覚閾値は超えていませんでした。我々もこのあたりの周波数の低周波音は感じられませんでした。
本件の場合、被申請人側が室外機を移設しましたが、苦情者は、初めは良くなったような気がしたが、結局やはり聞こえるということでした。
このとき同時に改修された排気ダクトの方から低周波音が出ているのではないかという苦情者の主張もあったようです。
この事例では、苦情者の耳鳴りの可能性も考えられますが、もし、そのように問題の原因が苦情者側にある場合には、対策をして低周波音がなくなっても効果が出ないということになります。