・○塩田 それから、測定機関の能力レベルはまちまちであり、本件では、能力レベルの高い機関へ頼んだことが良かったと思います。
低周波音と騒音のみならず、室外機の電流使用量や現場の風向・風力も同時測定することで、不足のない調査ができたと思います。
こうした騒音事件では、住民や苦情者等から何を言われてもきちんとしたデータを提出できることが重要だと思います。やっかいな事件になればなるほど、きちんとした測定をすることが解決に向かう第1歩と思います。
コストはかかると思いますが、能力レベルの高い専門的でかつ経験のある機関へ頼むことが重要だと思います。
都道府県や市町村が困ったときにはそういう専門家のところへ相談に行って指導を仰ぐことも重要だと思います。
○針塚 高崎や荒川の事件でも室外機の出力を示す電流計も使ってパターン測定を行いました。
私はそこまでやる必要があるのだろうかと思っていましたが、騒音等の測定結果が申請人の予想値と異なっていた場合、申請人から「測定した日の稼働状況は普段と違っていた。
何か操作されたのではないか。」という主張が出て来ることは珍しくないようで、その場合に「いや、このとおり定格出力で動いていましたよ。」と電流計の記録から反論することができるわけです。
しかし、パターン測定の準備はけっこう大変です。
意外なことですが、発生源側の人も室外機がどのスイッチと対応しているか分かっていないことがあり、スイッチを入れたら予定していた機械が動かず、予定と違う機械が動き出して慌てたことがありました。
それから、室内機の設定温度と気温の関係によってサーモスタットが働いて突然機械が停止したり、動き出さなかったりしたこともありました。
いずれにしても稼働状態は目で確認することが大切だと思いました。
あと、電流計を設置する分電盤の位置、定格出力を確認するための機械の型式、コンプレッサーとコンデンサーが分離しているタイプでは系統図も事前に確認しておく必要がありますが、発生源側が積極的に協力してくれないことがあり、説得に苦労したことを思い出します。
○楊井 ところで、低周波音は、新聞やテレビで取り上げられることがありますが、それが事件処理に影響したことはありませんか。
○落合 低周波音の事件が増えるというのは、マスコミの取り上げ方にも原因がありそうです。低周波音というのが何だかよく分からない、地震でもないのに勝手に物が動くというポルターガイスト現象のようなオカルトまがいの取り上げ方をされたこともあり、一般の人たちの誤解を招いているようです。
このため、音が聞こえないで体調不良の場合、その原因が低周波音ではないかという思い込みを生じさせたりして、本当に低周波音が問題となるケースと正しい区別がされず、混乱を招いています。
最初に誤解があると、それを解きほぐすことから始めなければならなくなることもあります。
市町村の職員の方も苦情を受け付けたときに「低周波音問題対応の手引書」や「低周波音の測定方法に関するマニュアル」(注)に記載したチェックリストを参考にして、原因が低周波音かどうかを適切に判断してもらいたいと思います。
もっとも、寄せられた低周波音苦情が本当に低周波音によるものかどうかを的確に判断するための目安として環境省が作成した「参照値」(「低周波音問題対応の手引書」参照)の発表後、低周波音苦情が急増したと聞いており、どうも、低周波音が話題になるだけでも苦情が増える原因になるようです。
(注) 低周波音の測定方法に関するマニュアル
(平成12年10月 環境省大気保全局大気生活環境室)