・○塩田 この事件では、被申請人側の関係者として設計事務所、建設会社、設備会社、設備機器メーカーなど複数いましたが、個別に話を聴くと、それぞれに言い分があって、なかなか責任をもって対応してくれるところが決まりませんでした。
そこで、一同に集まって話し合ってもらったところ、始めに、設備機器メーカーが主体になって対策を検討してくれることになりました。順々に、対策に対する検討について、議論が進んで行きました。
最終的に、模型実験による検討によって、干渉型の防音壁を設置するところまでになりました。
このようなプロセスが、大変、有効だったと思います。
それから、発生源側で機械を1台ずつ、あるいはいくつかにグルーピングしてグループ毎に動かして機械毎(あるいはグループ毎)の稼働パターンを決めて発生源を測定する「パターン測定」を行うことで、それぞれの機械の被害に寄与する程度を特定することができたということも重要だったと思います。
一般には、機械を個別に動かして欲しいと頼んでもなかなか応じて貰えない。私の経験では、工場の機械が発生原因であったケースで、普段は、難しいため、盆休み、年末や正月休みを利用して、機械や設備機器を停止するときに1台ずつ停止して行き、あるいは1台ずつ動かして行くようにお願いしたことがあります。公調委が関与することによって、発生源側の協力を得てこのようなパターン測定が実施できたことが有益だったと思います。
○針塚 荒川の事件でも、公調委が調査を実施してパターン測定を行った結果、騒音や振動に寄与している機械、また、それぞれの寄与の程度が分かったので、適切な解決ができたように思います。
裁判所の民事訴訟では、このような充実した調査を行うことはなかなか期待できませんから、公調委ならではの解決だったと思っています。
○落合 それから、清瀬・新座の事件で初めて行ったのは、機械の稼働パターンの測定と並行して被害者側の体感を記録したことです。
つまり、被害者が時々刻々の音の変化をどのように感じるか、文字や言葉で表現してもらったわけです。
その後、深川と高崎の事件でもこれをやりましたが、これは説得力があったと思います。機械の稼働パターンに自分の体感が対応していないということになれば、因果関係に疑問があるということになるからです。
この経験は環境省の作成した「低周波音問題対応の手引書」(注)でも、その成果が取り入れられました。
(注) 低周波音問題対応の手引書(平成16年6月 環境省)